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2017年4月 9日 (日)

議会の承認なしのシリア攻撃は大きな過ちだ…ったはずだが?

 

 

  米トランプ政権がシリアのアサド政権への攻撃に踏み切ったことに対し、米議会内には容認論が強い一方、事前承認を経ない軍事行動を問題視する意見がある。政権は国際社会だけでなく、国内でも攻撃の合法性やシリア戦略についての説明を求められそうだ。
  共和党の大統領候補指名を争ったルビオ上院議員が「無実の人々に対するさらなる攻撃を防ぐ」と評価するなど、与野党双方からトランプ大統領の決断を支持する声が目立つ。
  ただ、手順については異論があり、民主党のケーン上院議員は7日、「倫理的には正しい」としたうえで、議会の承認がない軍事行動には「法的正当性がない」と指摘。同党のリュー下院議員も、政権の「一方的な決定」は憲法違反にあたると批判した。
     (毎日新聞 2017/04/08 21:00)

 

 

 ドナルド・トランプ大統領によるシリアへのミサイル攻撃に関する米国議会の反応だが、記事は、

 

  与党内でも、マシー下院議員が、トランプ氏が2013年8月にツイッター上で「議会の承認なしのシリア攻撃は大きな過ちだ」と投稿していたことを指摘。ライアン下院議長も、政権が追加攻撃を行う場合は「事前に協議するのがふさわしい」と議会との共同歩調を促した。
  シリア攻撃を巡っては、オバマ前政権も13年に議会承認を求めたが、共和党と民主党リベラル派が反対し、武力介入は土壇場で見送られた経緯がある。

 

このように続く。「与党」である(はずの)共和党のマシ―下院議員からも、

 

  トランプ氏が2013年8月にツイッター上で「議会の承認なしのシリア攻撃は大きな過ちだ」と投稿していた

 

このように、手続き上の問題に止まらず、トランプ氏自身の過去の主張との違い(主張の一貫性の無さ)までもが指摘されてしまっている事実は非常に興味深い。

 

 この問題については、「アメリカ時間の6日夜に急きょ行なわれたシリアの空軍基地への攻撃について、アメリカの世論はおおむね前向きな受け止めを示しています」としながらも、

 

    一方、米軍の運用に大きな権限をもっている連邦議会では、保守強硬派の一部議員などが「事前に行動を承認しておらず大統領の越権行為だ」と批判の声をあげています。
     (TBS系(JNN) 2017/04/08 13:07)

 

このように連邦議会で「保守強硬派の一部議員」の批判があることを取り上げた報道もあった(それが誰であったのかは記されていないのが残念だが)。

 

 

 シリア軍により米国が攻撃されてもいないにもかかわらずシリアに対するミサイル攻撃をすることの国際法上の正当性の問題も、当然のことながら指摘されているが、米国内での手続き上の正当性も、主張の一貫性の無さと共に(「保守強硬派」を含む)米国議会の側から問われてしまっているわけである。

 

 

 トランプ政権内での意思決定に関しては、

 

  シリア空軍基地へのミサイル攻撃を巡り、トランプ米政権内の内紛が表面化した。
  米メディアによると、トランプ氏の最側近だったバノン大統領上級顧問・首席戦略官がシリア攻撃に反対する一方、トランプ氏の娘婿クシュナー大統領上級顧問が実施を求めたという。攻撃の実現は、バノン氏のホワイトハウス内での影響力低下を示している可能性がありそうだ。

  米誌ニューヨーク・マガジンによると、バノン氏はシリアの化学兵器では米国民が犠牲になっておらず、米国が対抗措置を取るのはトランプ氏が推進する「米国第一」主義に反する、と進言したという。これに対し、クシュナー氏は、子供を含めた痛ましい被害が出ていることを踏まえ、「アサド政権を罰するべきだ」と訴えた。トランプ氏は、クシュナー氏の意見に賛同した。
     (読売新聞 2017/04/08 17:55)

 

このような報道もある。これまで大統領上級顧問・首席戦略官としてトランプ政権を主導してきたバノン氏は、そのイデオロギーに忠実に、

 
  シリアの化学兵器では米国民が犠牲になっておらず、米国が対抗措置を取るのはトランプ氏が推進する「米国第一」主義に反する、と進言した

 

にもかかわらず斥けられただけでなく、

 

  バノン氏は4日、国家安全保障会議(NSC)の閣僚級委員会常任メンバーから外された。さらに今後は「更迭か、役割見直しの可能性がある」(米紙ウォール・ストリート・ジャーナル)という。

 

このように、トランプ政権内での主導的地位を失いつつある。

 今回のシリア攻撃は、トランプ政権が掲げた当初の意味での(孤立主義的と形容され得る)バノン流の「米国第一主義」が後退しつつあることを示すものとも言えるが、国際社会への積極的介入を通しての「米国第一」の復活、つまるところブッシュ流の米国への回帰の兆候とも言えそうである。

 

 

  シリアの化学兵器使用疑惑を巡り、トランプ米大統領はオバマ前政権の「弱腰と不決断」がシリア情勢の悪化を招いたと批判したが、就任前はシリア内戦に「介入すべきではない」と訴えており、メディアから矛盾を指摘されている。
  トランプ氏は2013年9月、ツイッターに「オバマ大統領がシリアを攻撃したがる唯一の理由はメンツを保つため。シリアを攻撃するな」と投稿。オバマ氏は当時、アサド政権の化学兵器使用で「レッドライン(越えてはならない一線)を越えた」としたが、土壇場で軍事介入を見送り、国内外から批判を浴びていた。
  トランプ氏は翌14年にかけてツイッターで何度もシリア内戦への対応に言及し、「米国の問題ではない」などと繰り返した。大統領選出馬表明後のインタビューでも「シリアと『イスラム国』(IS)を戦わせればいい」(CNN)、「米国にはアサドよりも大事な問題がある」(MSNBC)などと発言していた。
  5日のアブドラ・ヨルダン国王との共同記者会見で、報道陣から一貫性のなさを問われたトランプ氏は「私は頭が柔らかい人間。柔軟さが誇りだ」と開き直った。
     (毎日新聞 2017/04/06 11:07)

 

 オバマ大統領のシリア政策(シリアによる化学兵器の使用を問題視したものだ)を「米国の問題ではない」として批判し続けた人物が、シリアによる化学兵器の使用を理由にミサイル攻撃を即座に命令する。今回も、

 

  報道陣から一貫性のなさを問われたトランプ氏は「私は頭が柔らかい人間。柔軟さが誇りだ」と開き直った

 

「一貫性のなさ」は「柔軟さが誇り」との言葉で説明されるのだろうか?

 

  米政府は8日、米軍によるシリア攻撃について説明する書簡をトランプ大統領が議会へ送ったと発表した。
  大統領はこの中で「米国の死活的な国家安全保障・外交政策上の利益のために行動した」と主張。「必要かつ適切なら追加の行動を取る」と述べた。
     (時事通信 2017/04/09 08:51)

 

 しかし、シリア軍の化学兵器使用が事実であったとしても、それが果たして「米国の死活的な国家安全保障上」の問題と言い得るのかどうか?

 そもそものトランプ氏は、

 

  トランプ氏は2013年9月、ツイッターに「オバマ大統領がシリアを攻撃したがる唯一の理由はメンツを保つため。シリアを攻撃するな」と投稿。
  トランプ氏は翌14年にかけてツイッターで何度もシリア内戦への対応に言及し、「米国の問題ではない」などと繰り返した。大統領選出馬表明後のインタビューでも「シリアと『イスラム国』(IS)を戦わせればいい」(CNN)、「米国にはアサドよりも大事な問題がある」(MSNBC)などと発言していた。

 

シリアへのミサイル攻撃は、かつての自身の主張からすれば整合性のない唐突な行動にしか見えない。そこにあるのは「柔軟さ」ではなく、「思い付き」で行動する「ご都合主義」に見える。

 ま、それがトランプ・クオリティーなんだろうが、「支持率が落ちたら戦争」のセオリーには整合的である。

 いずれにせよ、ドナルド・トランプも「支持率が落ちたら戦争」という一般的に信じられている基本に忠実な米国大統領の一人に過ぎなかったことが明らかになった瞬間でもあったが、それが就任後わずか100日にも満たない時点であったことでも、ドナルド・トランプは米国史上に名を残す存在となるであろう(回復するかも知れない支持率がどこまで持つか? 新たな注目点ではある)。

 

 

 

 

 

(オリジナルは、投稿日時 : 2017/04/08 22:16 → http://www.freeml.com/bl/316274/301884/

 

 

 

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