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2017年3月

2017年3月 9日 (木)

教育勅語の精神(籠池 vs 稲田)

 

 トランプ大統領の言動から目が離せない一方で、いわゆる「安倍晋三記念小学校」問題もまた日々面白過ぎる展開が続いている。

 

 

 

 

 産経新聞は、「森友学園 4疑惑「不認可」決定付け 理事長経歴誤り、私学推薦枠虚偽…」と題された記事(2017/03/09 15:08)の中で、「疑惑」として、

 

  学園は、私立「海陽中等教育学校」(愛知県蒲郡市)と推薦入学枠の提供で合意したと府に文書で報告したものの、同校が真っ向から否定。

  さらに、学園側が提出した籠池氏の経歴が事実と異なることも発覚。自治省に入省した後、奈良県庁に出向したとしていたが、実際は奈良県に新卒で採用されており、学園側は「自治省に『出張した』という話をアルバイトが『出向した』と書き間違え、それを(経歴書に)転記した」と釈明した。

  小学校の建築費について、府と国、大阪空港の運営会社に提出した契約書で、それぞれ「7億5600万円」「23億8464万円」「15億5520万円」と、異なる記載をしていた。

  学園が府私学審議会に提出した雇用予定の教員名簿に、公立小の男性教員の名前を無断で記載した疑いも浮上している。

 

この4つを示している。

 どれも森友学園作成の文書上の虚偽記載の事実に関するものだが、そもそも「安倍晋三記念小学校」としての開校を謳い寄金を集めていた問題があるわけで、安倍晋三首相の主張が正しければ、首相当人に無断での寄金集めということになる。端的に言って詐欺行為そのものであろう。

 

 

 

 周知の通り、既に幼稚園経営で有名となった森友学園のウリのひとつは、幼稚園児による「教育勅語」の暗誦である。

 

 

 稲田朋美防衛大臣は国会での答弁の中で、

 

  大阪市の学校法人「森友学園」の幼稚園で園児が教育勅語を暗唱させられていたことに関し、福島瑞穂氏(社民)が見解をただした。稲田氏は「勅語の精神は親孝行、友達を大切にする、夫婦仲良くする、高い倫理観で世界中から尊敬される道義国家を目指すことだ」と発言。「全く誤っているというのは違う」と語った。
     (毎日新聞 2017/03/08 19:49)

 

このように教育勅語についての認識を示している。

 また、同記事によれば同じ答弁の中で、

 

  稲田氏は一方、学園の籠池泰典理事長との関係について「私のパーティーに来ていた記憶はあるが、10年ぐらい会ったことも話したこともない」と述べた。

 

このように報道されている。

 

 

 この点について、森友学園の籠池理事長は自ら収録した動画の中で、

 

  「国会議員の先生が私のことを『全然知らない』と言っていたが、よく存じ上げている方もいらっしゃる。 『10年前にしか会ったことがない』とおっしゃっていたが、そんなことない。 2年ほど前にお会いしたことがあるのではないかと思う。ある特定の会合の中で。でも、そういうことを言わないのはおかしいのではないか。 籠池潰しはやめてほしい。尻尾切りはやめてほしい」
     (J-CASTニュース 2017/03/09 18:56)

 

このように主張していたことが報じられている。「『10年前にしか会ったことがない』とおっしゃっていたが、そんなことない。 2年ほど前にお会いしたことがあるのではないかと思う。ある特定の会合の中で」との指摘は、稲田氏へ向けられたものと理解されているが、籠池氏の主張が正しいのだとすれば、稲田氏の主張は虚偽であったことになる。もちろん、いわゆる「安倍晋三記念小学校」の開校準備に際しての様々な虚偽の主体が籠池氏であったことからすれば、動画での籠池氏の主張が虚偽である可能性も残されてはいる。

 

 

 

 いずれにせよ、稲田氏も籠池氏も「教育勅語」を非常に重要視する人物であることは確かである。稲田氏は、「勅語の精神は親孝行、友達を大切にする、夫婦仲良くする、高い倫理観で世界中から尊敬される道義国家を目指すことだ」と主張していたわけだが、せっかくの機会なので、あらためて原文を引いてみよう。

 

朕惟フニ我カ皇祖皇宗国ヲ肇ムルコト宏遠ニ徳ヲ樹ツルコト深厚ナリ我カ臣民克ク忠ニ克ク孝ニ億兆心ヲ一ニシテ世々厥ノ美ヲ済セルハ此レ我カ国体ノ精華ニシテ教育ノ淵源亦実ニ此ニ存ス
爾臣民父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信シ恭倹己レヲ持シ博愛衆ニ及ホシ学ヲ修メ業ヲ習ヒ以テ智能ヲ啓発シ徳器ヲ成就シ進テ公益ヲ広メ世務ヲ開キ常ニ国憲ヲ重シ国法ニ遵ヒ一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ是ノ如キハ独リ朕カ忠良ノ臣民タルノミナラス又以テ爾祖先ノ遺風ヲ顕彰スルニ足ラン
斯ノ道ハ実ニ我カ皇祖皇宗ノ遺訓ニシテ子孫臣民ノ倶ニ遵守スヘキ所之ヲ古今ニ通シテ謬ラス之ヲ中外ニ施シテ悖ラス朕爾臣民ト倶ニ拳々服膺シテ咸其徳ヲ一ニセンコトヲ庶幾フ
明治二十三年十月三十日
     御名御璽

 

 私にとって興味深いのは、確かに教育勅語には「嘘をついてはいけない」とは一言も書いてないという事実である。籠池氏も稲田氏も、どれだけ虚偽を申し立てようが、教育勅語の精神に背いているわけではないということだけは確認しておきたい(註:1)。

 

 

 

【註:1】
 言うまでもないことだとは思うが、稲田氏の教育勅語理解の底の浅さは目を覆うばかりである。教育勅語の内容について「全く誤っているというのは違う」と主張するのは稲田氏のご自由ではあろうが、稲田氏が教育勅語の本義を理解しているようには見えない。
 稲田氏は「教育勅語の精神」を「親孝行、友達を大切にする、夫婦仲良くする、高い倫理観で世界中から尊敬される道義国家を目指すこと」と要約している。
 しかし、それでは勅語に込められた明治天皇の意思を理解したことにはならないだろう。
 稲田氏の称揚する徳目について、

  爾臣民父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信シ恭倹己レヲ持シ博愛衆ニ及ホシ学ヲ修メ業ヲ習ヒ以テ智能ヲ啓発シ徳器ヲ成就シ進テ公益ヲ広メ世務ヲ開キ常ニ国憲ヲ重シ国法ニ遵ヒ一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ

このように位置付けられているのである。
 既に大日本帝國憲法において大権の保持者とされた天皇が、その臣民に対し最終的に求めているのは「以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ」ということなのであって、その点を無視しては勅語の本義を理解したことにはならない。
 「父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信シ恭倹己レヲ持シ博愛衆ニ及ホシ学ヲ修メ業ヲ習ヒ以テ智能ヲ啓発シ徳器ヲ成就シ進テ公益ヲ広メ世務ヲ開キ常ニ国憲ヲ重シ国法ニ遵ヒ一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ」と並べられた「徳目」は、それ自体が目的なのではなく、「天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼」する上で「朕カ忠良ノ臣民」に期待されている行為規範なのであり、求められているのは「父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信シ恭倹己レヲ持シ博愛衆ニ及ホシ学ヲ修メ業ヲ習ヒ以テ智能ヲ啓発シ徳器ヲ成就シ進テ公益ヲ広メ世務ヲ開キ常ニ国憲ヲ重シ国法ニ遵ヒ一旦緩急アレハ義勇公ニ奉」するような「忠良ノ臣民」による「天壌無窮ノ皇運」の「扶翼」なのである。
 「スヘシ」の文言が示すのは天皇の「臣民」に対する強い意思の表明であることを見落としてはならない。「臣民」に究極的に求められているのは天皇を大権の保持者とした政治体制を永遠に支えることであって、その点に触れずに教育勅語を語ることは勅語の本義に反する行為(明治天皇の大御心を無視した行為)と言わざるを得ない。もっとも、本文で指摘しておいたように、教育勅語には虚偽を戒める項目はない以上、稲田氏が(あるいは籠池氏が、そして日本会議に代表される面々が)教育勅語の本義をどのように捻じ曲げた上で称揚しようが恥じる必要は感じないのであろう。
 勅語の本義を理解せずに称揚するのは当人の浅薄さの証明となるし、本義を理解した上であえて語らないのだとすれば知的な誠実さが疑われる。

 

 

 

 

 

(オリジナルは、投稿日時 : 2017/03/09 21:59 → http://www.freeml.com/bl/316274/299043/

 

 

 

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