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2017年3月

2017年3月30日 (木)

トランプのアメリカ、アメリカのトランプ

 

 

  ドナルド・トランプ米大統領にとって大きな敗北だ。3月24日、オバマケア(医療保険制度改革)の廃止代替案を議会採決直前に撤回せざるをえなくなったのだ。共和党の「フリーダム・コーカス(下院議員連盟)」と呼ばれる保守強硬派の支持が得られず、賛成票が足りなかった。これで、選挙戦中あれほど強く廃止代替を公約していたオバマケアは予見可能な将来、ずっと続くことになった。上下院を共和党が支配する状況下でさえ、最重要法案を採決に持ち込めない──トランプ米大統領と共和党の驚くべく無能さがさらけだされた瞬間だった。
     (ニューズウィーク日本版 2017/03/27 17:30)

 

 米国大統領となったドナルド・トランプは選挙戦時には公約として「オバマケア」の撤廃を掲げており、議会で廃止代替案(トランプケアあるいはライアンケアと呼ばれた)を成立させることにより、公約は実現されるはずであったが、共和党内の反対者(保守強硬派)のために採決に持ち込むことが出来なかった。

 日本では「党議拘束」なるものが存在し、まず考えられない話である。この顛末を通して、米国の政治と日本の政治の決定的違いを、そして政治制度を支える思想的基盤の決定的な違いを目の当たりにさせられた思いがした。

 我が日本の大政翼賛的個人責任回避的風土と、個人主義に支えられた責任意識の下で「保守強硬派」と呼ばれる人々であっても(「保守強硬派」であればこそ、より原理主義的な個人主義者でもあるわけだから)党派ではなく個人としての信条に忠実に行動する米国の風土の違いである。

 

 

 ドナルド・トランプの選挙公約としては、いわゆる「温暖化」論の否定を背景とした環境規制の撤廃もあるわけだが、この点についても米国内には興味深い反応があった。環境規制撤廃の恩恵を受ける側にいるものと思われがちな石油大手のエクソンモービルが、「パリ合意」からの離脱への反対を表明したというのである。

 

  米石油大手エクソンモービルがトランプ米大統領に対し、地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ合意」から離脱しないよう求める書簡を送っていたことが30日までに明らかになった。

  エクソンは書簡の中で、パリ協定は「気候変動のリスクに対処する効果的な枠組み」であり、米国は同協定の条件下でも「競争に有利な立場に」あるとの見解を示し、米国は残留すべきだと訴えた。
  トランプ大統領は28日、発電所からの温室効果ガスの排出削減を定めた「クリーンパワー計画」を撤廃する大統領令に署名。書簡はその数日前の22日に送られた。トランプ政権はエクソンに対してパリ合意への見解を尋ねていた。
  「わが社はパリ協定を、2015年12月の成立時も16年11月の発効時も歓迎した。そして協定への支持をさまざまな機会に繰り返し示してきた」と、エクソンは書簡で述べた。
     (CNN.co.jp 2017/03/30 12:06)

 

 ま、温暖化の原因としての二酸化炭素犯人論の当否は別として、環境規制への適合は新たなビジネスチャンスでもあり、米国のエネルギー産業界が一枚岩のトランプ支持となっていないということを示すものとも考えられ、興味深い展開である(しかもトランプ政権で国務長官となったティラーソンは、そのエクソンモービルのトップであった)。

 

 

 インターネット上の個人情報保護をめぐる規制の撤廃を米議会下院が可決したことに対する批判を、トランプ支持を掲げるはずの保守派メディアであるブライトバート・ニュースが掲載したとの報道も興味深い。

 

  この規定は、オバマ前政権の末期に連邦通信委員会(FCC)が承認したものだ。インターネット接続業者(プロバイダー)に対し、ユーザーの個人情報を収集したり他者に譲渡する場合には本人の許可を得ることを義務づけていた。
  下院は28日、同ルールの撤廃を共和党の賛成多数で可決していた。
  プライバシー保護派や消費者保護団体、それにハイテク業界はそろって今回の議会の決定を攻撃。ニューヨーク・タイムズの社説も、保守派メディアのブライトバート・ニュースのコメンテーターも珍しく足並みをそろえている。
  「これはオバマ時代の規制の中で存続すべき非常に数少ないものの1つだ」と、ブライトバートのコメンテーターは28日夜に書いた。
     (CNN.co.jp 2017/03/30 15:35)

 

 私が大政翼賛的風土の中に生きる日本人の一人であるからであろうか? 米国のゴリゴリの保守派メディアが個人情報の保護の必要を主張する姿に、正直なところ、どこか意表を突かれた気分である。

 

 

 不法移民をめぐる「聖域都市」への補助金撤廃もまたトランプ大統領の重要な政策だと思われるが、トランプ派であるはずの警察官組織から懸念を表明されてしまっている。

 

  全米最大の警察団体である警察友愛会のジム・パスコ事務局長は28日、ホワイトハウスでトランプ米大統領と会合し、不法移民に寛容な「聖域都市」への連邦補助金の交付を停止した場合、公共の安全を危険にさらす可能性があると警告した。会合後に、ロイターに明らかにした。
  同友愛会は、2016年の大統領選におけるトランプ氏の最大の支援団体。パスコ氏によると、ペンス副大統領やセッションズ氏も会合に同席したという。
  パスコ氏は、警察友愛会は聖域都市への政策を支持しないが、補助金停止によって、そうした地域の警察当局が影響を受ける可能性があるとの幹部の懸念を伝達。トランプ氏は、公共の安全に影響が出ないよう友愛会と協力していく姿勢を示したという。
     (ロイター 2017/03/29 14:22)

 

 警察友愛会は「聖域都市」の政策を支持するわけではないが、連邦補助金交付の停止が「公共の安全を危険にさらす可能性」につながることを「警告」したというのだ。行政の執行者としてのリアリズムと言うべきであろうか。

 

 

 軍事についても、プロフェッショナルとしての軍人のリアリズムは、トランプ政権の政策への懸念を表明している。

 

  退役した米軍の大将や中将が21日、トランプ政権が示す国務省の予算の大幅削減を阻止するためにワシントンに集まり、議員らの説得に動いた。
  トランプ政権は2018会計年度(2017年10月~18年9月)の予算案で、軍事費を540億ドル(約6兆円)増やす一方、国務省の予算を110億ドル削減しようとしている。前年度比28.7%に及ぶこの減額では援助や開発基金が主な対象となっている。
  04~07年にイラクで指揮官を務めたジョージ・ケーシー退役陸軍大将は、外交、援助、開発への投資を減らすことは究極的には米国をより安全でない状態に追いやることになるとの見解を示す。
  「これを単にいいことだと考えないことが重要だ」「(外交は)国家の安全保障政策上の重要なツールだ」
  ケーシー氏は07~11年、アフガニスタンでも陸軍参謀総長の任に就いた。「我々はイスラム過激派との長期に渡るイデオロギー上の戦いにあり、こうしたグループを生む不安定さが我々の敵だと考えるようになった」「豊かさをはぐくみ、自国を守る能力を高めることが安定につながる」とケーシー氏は述べる。

  ケーシー氏や他の退役将校は開発や外交が軍隊の仕事を減らしてくれると指摘する。現国防長官のジェームズ・マティス氏も過去に同様の見解を示している。
  ケーシー氏はまた、「軍隊にとっても最も難しいのは、軍事的手段では解決できないことへの対処に迫られることだ」との認識も示す。
  「もし軍人として9・11(米同時多発テロ)以降に何かを学んだのだとしたら、それは我々が現在直面している課題は純粋な軍事的解決策に必ずしも適さないということだ」「軍事も、外交も、開発も必要とする――これが教訓だ。今日成功するにはその全てが必要だ」
      (CNN.co.jp 2017/03/22 18:02)

 

  元米中央情報局(CIA)長官のペトレアス退役陸軍大将ら米軍の元高官ら121人が27日、上下両院の与野党指導部に宛てた書簡で、外交や開発援助向けの予算確保を要望した。
  ロイター通信が報じた。トランプ大統領が表明した国防費増額のあおりで、非軍事部門の予算が大幅に削られれば、むしろ米国の安全を損なうと警鐘を鳴らしている。
  書簡は過激派組織「イスラム国」(IS)やエボラ出血熱を例に挙げ、「われわれは軍での経験から、国家が直面する危機の多くが軍事力だけでは解決できないことを知っている」と指摘。紛争を防止し、現場の兵士を危険にさらす必要性を低くするために「国務省や米国際開発局(USAID)などは極めて重要だ」と主張した。
     (時事通信 2017/02/28 14:59)

 

 トランプ政権が陥りつつあると見做されている外交の軽視は軍人の利益にも反するという主張であるが、日本の「保守」を自称する人々にも深く理解して欲しい話である(もちろん、サヨクの皆さんにも―プロフェッショナルとしての軍人のリアリズムというものを)。

 

 

 

 

 

(オリジナルは、投稿日時 : 2017/03/30 20:54 → http://www.freeml.com/bl/316274/301148/

 

 

 

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2017年3月28日 (火)

「安倍晋三記念小学校」をめぐる首相閣下vs辻元清美先生対決

 

 いわゆる「安倍晋三記念小学校」をめぐる盛り上がりの中で、ネット上では(メディアが取り上げようとしない)民進党の辻元清美議員の「疑惑」でも盛り上がっているようである。

 そんな「盛り上がり」を横目で見ていたら、

 

  安倍晋三首相は28日の参院決算委員会で、学校法人「森友学園」の問題に関連し、籠池泰典氏の妻が首相の昭恵夫人に送っていたメールに名前が登場した、民進党の辻元清美衆院議員に言及した。
  民進党の斉藤嘉隆議員が、籠池氏が夫人を通じて100万円を寄付されたと主張していることに触れ、首相サイドが授受を否定している根拠をただし、「否定するなら根拠を示さなければならない」と指摘。
  これに対し、首相は辻元氏が公の場で説明していないことを念頭に、「御党の辻元議員との間にも、同じことが起きている。今日の新聞に『3つの疑惑』と出ていましたね」と、不機嫌そうに言い放った。
  「いっしょにするな」とやじが飛ぶと、首相は「いっしょにするなというが、辻元議員は真っ向から否定している。これも証明しないといけない」と指摘。辻元氏への説明を求めた。
     (日刊スポーツ 2017/03/28 12:56)

 

このような記事に遭遇してしまった。

 

 ここに「3つの疑惑」とあるのは、

 

  学校法人「森友学園」(大阪市)の国有地払い下げ問題をめぐり、民進党の辻元清美元国土交通副大臣に関する「3つの疑惑」が新たな争点に浮上し、日本維新の会などが追及姿勢を示している。学園の籠池泰典氏の妻、諄子(じゅんこ)氏が、安倍晋三首相の昭恵夫人とのメールのやりとりで、辻元氏に複数回言及したからだ。民進党は誤った内容だとメディアに情報を広めないよう「忖度(そんたく)」を求めるが、籠池氏の発言に依拠して首相らを追及しながら、都合の悪い妻の言葉は封じようとする矛盾に陥っている。(水内茂幸)
  ≪1≫幼稚園侵入
 「辻元清美議員のやらせ、を明らかにしていきます」。維新の足立康史衆院議員は25日、自身のツイッターでこう表明した。
  1つ目の疑惑は、1日の諄子氏のメールにある辻元氏が「幼稚園に侵入しかけ 私達(わたしたち)を怒らせようとしました」(原文ママ)と記載された部分だ。
  民進党役員室は24日発表の見解で「そのようなことは一切なく同議員は塚本幼稚園の敷地近くにも接近していない」と否定した。
  辻元氏は2月28日、民進党視察団のメンバーとして豊中市の小学校建設予定地などを視察。辻元氏は21日の党視察団にも参加したが、同日の視察団は大阪市の塚本幼稚園を訪れ、籠池氏に面会を断られている。
  ≪2≫作業員派遣
  2つ目の疑惑も、3月1日の諄子氏のメールに記された辻元氏が作業員を、小学校建設現場に「送り込んだ」というものだ。
  メールには「嘘の証言した男は辻元と仲良しの関西生コン(※連帯ユニオン関西地区生コン支部とみられる)の人間でしたさしむけたようです」「孫請業者の作業員がその委託社長がしてないといったのにもかかわらずその三日だけきた作業員が辻元清美が潜らせた関西なんとか連合に入っている人間らしいです」(原文ママ)とある。
  辻元氏が代表を務めた政党支部「民主党大阪府第10総支部」の平成26、27両年分の政治資金収支報告書によると「大阪兵庫生コン経営者会」からそれぞれ献金を受けた。ただ、民進党関係者は「諄子氏が指摘したであろう作業員は辻元氏と面識はない」と述べる。野田佳彦幹事長は今月27日の会見で「(諄子氏らが)根も葉もないことを根拠にやりとりした」と否定した。
  ≪3≫14億値引き
  第3の疑惑は、学園の小学校建設地に隣接する「野田中央公園」についてだ。
  同公園はもともと国有地。平成22年10月12日の豊中市議会での市側説明によると、国との契約金額は14億2386万3000円。これが計14億262万円の国庫補助金などを得て、最終的に市の負担は2124万3000円で済んだ。
  市に交付された国庫補助金は、リーマン・ショックの経済対策目的などで、麻生太郎内閣が平成21年度補正予算で決めたものだ。ただ、辻元氏は21年9月から22年5月まで民主党政権で国交副大臣を務めたこともあり、同年10月の豊中市議会では質問者から「政権が代わったからこうなったのか」などの指摘も出た。
     (産経新聞 2017/03/28 07:55)

 

この産経新聞記事に示されたものを指すのであろう。

 

 しかし、だ。特にネット上で盛り上がっているのは、産経新聞により「第3の疑惑」として提示されている「野田中央公園」への「補助金」をめぐるものだが、これ、記事をちゃんと読めば、

  市に交付された国庫補助金は、リーマン・ショックの経済対策目的などで、麻生太郎内閣が平成21年度補正予算で決めたもの

このように、麻生太郎内閣時代の決定事項であることが明記されている。つまり、明らかに、「第3の疑惑」なるものと辻元清美議員は無関係だということが理解出来るはずだ(「国庫補助金」の決定が「疑惑」だというなら、それは辻元議員をめぐる「疑惑」なんかではなく、麻生政権にまつわる「疑惑」なのである―まさかそう主張したいわけでもあるまいが)。ま、ネット上の「盛り上がり」なんてのはその程度のものだろうが、安倍晋三首相閣下までが真に受けてしまうのはどうかと思う(維新の足立康史議員も)。

 

 

 で、残るのは二つの「疑惑」だが、「第1の疑惑」なるものについては、「辻元氏は2月28日、民進党視察団のメンバーとして豊中市の小学校建設予定地などを視察。辻元氏は21日の党視察団にも参加したが、同日の視察団は大阪市の塚本幼稚園を訪れ、籠池氏に面会を断られている」というどちらの「視察」の際もメディアの取り巻く中の行動なので、辻元議員が「幼稚園に侵入しかけ」た事実があるのであれば、その時点でメディアの知るところとなっているはずである。で、ここで産経新聞に対する「疑惑」が浮上する。実は取材に行っていなかったんでしょ? 取材に行っていなかったことは許すとしても、報道陣の前での「視察」であったわけだから、「幼稚園に侵入しかけ」たのが事実であれば(悔しいだろうが報道関係者に取材し)「裏を取る」くらいのことはして欲しい、とは思う(もし取材に行っていたのであれば、事実として記者は目撃していたはずであり、その事実を記事の形で明らかにするべきである)。

 

 この二つの「疑惑」については、

 

  「幼稚園侵入」については、保守派を名乗る人の2月28日のブログが導火線らしい。証拠は示されていないが、辻元氏が森友学園運営の幼稚園に勝手に入ろうとしたなどと断言し、そのことを糾弾していた。この日は、辻元氏は、民進党調査チームのメンバーとして現地を視察していた。
  ツイッターでも、同様な情報が流れ、辻元氏は、3月1日のブログで事実無根だと反論した。視察のときは、調査チームの車の周囲を出ておらず、各メディアもそのことを知っているというのだ。
  籠池理事長も証拠を示さずに9日にユーチューブ動画で同様な発言をし、このときも、辻元氏はブログで反論した。さらに、籠池夫人が前出のメールで指摘すると、民進党は同じ24日、マスコミあてのファックスなどで「幼稚園侵入」についてはウソだと訴えた。また、「嘘の証言した男」についても、「(敷地内に埋められたゴミを扱った)作業員を下請け業者に送り込んだとされていますが、これも全くの事実無根です」(カッコ内は編集部記入)と主張している。これは、ネット上の噂を籠池夫人が信じたためではないかという。
     (J-CASTニュース 2017/03/27 20:05)

 

このようにも報じられ、この中では「第2の疑惑」について、

 

  また、「嘘の証言した男」についても、「(敷地内に埋められたゴミを扱った)作業員を下請け業者に送り込んだとされていますが、これも全くの事実無根です」(カッコ内は編集部記入)と主張している。

 

このように説明されている。この「嘘の証言した男」とは、

 

  森友学園の小学校用地として売却された大阪府豊中市の国有地を巡る問題で、地下のごみ処理に関わったという関西地方の土木業の男性が24日、毎日新聞の取材に応じた。建設用地には生活ごみなどが混じった土が山積みになっていたといい、男性は「敷地内に穴を掘り、その土を埋めた」と証言した。
  この証言は国会審議で取り上げられ、国側は産業廃棄物として撤去費を見積もったと明らかにした。
  男性は昨年11月、知り合いの業者に紹介され、建設現場に出入りするようになった。校舎は既に建ちつつあり、敷地南側に約2000立方メートルの土が山積みで、空になったしょうゆやマヨネーズの容器、靴、衣類などが混じっていた。発注元の業者からの指示で、周囲の地面を2~3メートル掘っては土を埋める作業を繰り返したという。
     (毎日新聞 2017/02/24 23:30)

 

この記事にある「関西地方の土木業の男性」のことだと思われるが、そもそもこれが「嘘の証言」と位置付けられ得るものであるのかどうかが疑わしい。

 この件に関して森友学園側は、

 

  学校法人「森友学園」(大阪市淀川区)が小学校用地として大阪府豊中市の国有地を鑑定額より安く取得した問題について、法人は、4月開校予定の小学校のホームページ(HP)に反論を掲載した。工事に関わった土木業者が「建設現場から掘り出したごみの一部を敷地内に埋めた」とする証言に対し、ごみを含む土は「仮置き」状態だとし、今後分別して処理する考えを示した。

  26日付で掲載された。法人は、施工業者に確認した内容として「工事の手順、工事用地の確保の観点から、グラウンド東側に仮置きしていた産廃土(産業廃棄物の交じった土)の一部を移動させる必要が生じた」と経緯を説明。「仮置きしている産廃土の地下を掘削し、一部の産廃土を縦積みにする形で仮置きした」とし、埋め戻しによる隠蔽(いんぺい)を否定した。また、工事の経過表も公表し、28日ごろから、ごみと土に分別し、分別できないものは産廃として搬出する考えを示した。
  工事に関わった土木業者はこれまでの毎日新聞の取材に、「発注元の業者の指示で敷地内に穴を掘り、ごみが交じった土を埋めた」などと証言している。
     (毎日新聞 2017/02/27 11:13)

 

このように「説明」していたのである。

 「仮置きしている産廃土の地下を掘削し、一部の産廃土を縦積みにする形で仮置きした」ものだと主張する以上、「発注元の業者からの指示で、周囲の地面を2~3メートル掘っては土を埋める作業を繰り返した」との「関西地方の土木業の男性」の証言を「嘘の証言」と言い切ることは難しい(「男性は昨年11月、知り合いの業者に紹介され、建設現場に出入りするようになった」のであって、森友学園の問題が注目される以前の話である以上、時系列からして辻元議員が「作業員を下請け業者に送り込んだ」とは考えにくい―建設現場への出入りの時期も「嘘の証言」だと主張されるのかも知れないが、密室での二人だけの出来事とは違い、取材により検証可能な問題に過ぎない)。

 そもそも、その後の経過では、

 

  敷地には今も土砂が山積みで、豊中市によると、その傍らには廃棄物も積み上がったまま。市が聞き取った施工業者の話によると、土砂と廃棄物をふるい分け、土砂は3日から順次、残土処理場に運び出している。
  問題は廃棄物だ。コンクリート片から生活雑品まである。市の担当者は「目視なので厳密ではないが、全体の9割が土砂、1割が廃棄物ではないか」。廃棄物を搬出する業者は見つかっておらず、7日以降も未定という。
  一連の廃棄物の搬出を巡り、大阪府私学課は学園に作業予定を照会したが、学園側の代理人弁護士は6日、メールで「15日までに搬出を終え、16日から新しい土を持ちこんで埋める」と回答した。しかし府は「業者名も明記されず、細かい工程も書かれていない。計画書として不完全」として再提出を求めた。
     (毎日新聞 2017/03/06 23:57)

 

これでは、3月の初めの時点になっても廃棄物の搬出・処理業者との契約さえ存在せず、そもそも「廃棄物」の「搬出」による処理の計画自体が存在しなかった疑い(工事日程に組まれていなかったように見える)の方が濃い。「今後分別して処理する」つもりなど最初からなかったからこそ、「廃棄物を搬出する業者は見つかっておらず、7日以降も未定」となったのだと疑われて当然な経緯である。

 

 

 

 別に辻元清美議員には何の義理もないが、この件に関しては、「疑惑」の存在そのものが疑わしいと私は見る。

 

 ネット上の皆様は別としても、産経新聞にも安倍首相閣下にも足立先生にも、もう少ししっかりして欲しい、とは思う。

 

 

 

 

 

(オリジナルは、投稿日時 : 2017/03/28 17:39 → http://www.freeml.com/bl/316274/300901/

 

 

 

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2017年3月 9日 (木)

教育勅語の精神(籠池 vs 稲田)

 

 トランプ大統領の言動から目が離せない一方で、いわゆる「安倍晋三記念小学校」問題もまた日々面白過ぎる展開が続いている。

 

 

 

 

 産経新聞は、「森友学園 4疑惑「不認可」決定付け 理事長経歴誤り、私学推薦枠虚偽…」と題された記事(2017/03/09 15:08)の中で、「疑惑」として、

 

  学園は、私立「海陽中等教育学校」(愛知県蒲郡市)と推薦入学枠の提供で合意したと府に文書で報告したものの、同校が真っ向から否定。

  さらに、学園側が提出した籠池氏の経歴が事実と異なることも発覚。自治省に入省した後、奈良県庁に出向したとしていたが、実際は奈良県に新卒で採用されており、学園側は「自治省に『出張した』という話をアルバイトが『出向した』と書き間違え、それを(経歴書に)転記した」と釈明した。

  小学校の建築費について、府と国、大阪空港の運営会社に提出した契約書で、それぞれ「7億5600万円」「23億8464万円」「15億5520万円」と、異なる記載をしていた。

  学園が府私学審議会に提出した雇用予定の教員名簿に、公立小の男性教員の名前を無断で記載した疑いも浮上している。

 

この4つを示している。

 どれも森友学園作成の文書上の虚偽記載の事実に関するものだが、そもそも「安倍晋三記念小学校」としての開校を謳い寄金を集めていた問題があるわけで、安倍晋三首相の主張が正しければ、首相当人に無断での寄金集めということになる。端的に言って詐欺行為そのものであろう。

 

 

 

 周知の通り、既に幼稚園経営で有名となった森友学園のウリのひとつは、幼稚園児による「教育勅語」の暗誦である。

 

 

 稲田朋美防衛大臣は国会での答弁の中で、

 

  大阪市の学校法人「森友学園」の幼稚園で園児が教育勅語を暗唱させられていたことに関し、福島瑞穂氏(社民)が見解をただした。稲田氏は「勅語の精神は親孝行、友達を大切にする、夫婦仲良くする、高い倫理観で世界中から尊敬される道義国家を目指すことだ」と発言。「全く誤っているというのは違う」と語った。
     (毎日新聞 2017/03/08 19:49)

 

このように教育勅語についての認識を示している。

 また、同記事によれば同じ答弁の中で、

 

  稲田氏は一方、学園の籠池泰典理事長との関係について「私のパーティーに来ていた記憶はあるが、10年ぐらい会ったことも話したこともない」と述べた。

 

このように報道されている。

 

 

 この点について、森友学園の籠池理事長は自ら収録した動画の中で、

 

  「国会議員の先生が私のことを『全然知らない』と言っていたが、よく存じ上げている方もいらっしゃる。 『10年前にしか会ったことがない』とおっしゃっていたが、そんなことない。 2年ほど前にお会いしたことがあるのではないかと思う。ある特定の会合の中で。でも、そういうことを言わないのはおかしいのではないか。 籠池潰しはやめてほしい。尻尾切りはやめてほしい」
     (J-CASTニュース 2017/03/09 18:56)

 

このように主張していたことが報じられている。「『10年前にしか会ったことがない』とおっしゃっていたが、そんなことない。 2年ほど前にお会いしたことがあるのではないかと思う。ある特定の会合の中で」との指摘は、稲田氏へ向けられたものと理解されているが、籠池氏の主張が正しいのだとすれば、稲田氏の主張は虚偽であったことになる。もちろん、いわゆる「安倍晋三記念小学校」の開校準備に際しての様々な虚偽の主体が籠池氏であったことからすれば、動画での籠池氏の主張が虚偽である可能性も残されてはいる。

 

 

 

 いずれにせよ、稲田氏も籠池氏も「教育勅語」を非常に重要視する人物であることは確かである。稲田氏は、「勅語の精神は親孝行、友達を大切にする、夫婦仲良くする、高い倫理観で世界中から尊敬される道義国家を目指すことだ」と主張していたわけだが、せっかくの機会なので、あらためて原文を引いてみよう。

 

朕惟フニ我カ皇祖皇宗国ヲ肇ムルコト宏遠ニ徳ヲ樹ツルコト深厚ナリ我カ臣民克ク忠ニ克ク孝ニ億兆心ヲ一ニシテ世々厥ノ美ヲ済セルハ此レ我カ国体ノ精華ニシテ教育ノ淵源亦実ニ此ニ存ス
爾臣民父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信シ恭倹己レヲ持シ博愛衆ニ及ホシ学ヲ修メ業ヲ習ヒ以テ智能ヲ啓発シ徳器ヲ成就シ進テ公益ヲ広メ世務ヲ開キ常ニ国憲ヲ重シ国法ニ遵ヒ一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ是ノ如キハ独リ朕カ忠良ノ臣民タルノミナラス又以テ爾祖先ノ遺風ヲ顕彰スルニ足ラン
斯ノ道ハ実ニ我カ皇祖皇宗ノ遺訓ニシテ子孫臣民ノ倶ニ遵守スヘキ所之ヲ古今ニ通シテ謬ラス之ヲ中外ニ施シテ悖ラス朕爾臣民ト倶ニ拳々服膺シテ咸其徳ヲ一ニセンコトヲ庶幾フ
明治二十三年十月三十日
     御名御璽

 

 私にとって興味深いのは、確かに教育勅語には「嘘をついてはいけない」とは一言も書いてないという事実である。籠池氏も稲田氏も、どれだけ虚偽を申し立てようが、教育勅語の精神に背いているわけではないということだけは確認しておきたい(註:1)。

 

 

 

【註:1】
 言うまでもないことだとは思うが、稲田氏の教育勅語理解の底の浅さは目を覆うばかりである。教育勅語の内容について「全く誤っているというのは違う」と主張するのは稲田氏のご自由ではあろうが、稲田氏が教育勅語の本義を理解しているようには見えない。
 稲田氏は「教育勅語の精神」を「親孝行、友達を大切にする、夫婦仲良くする、高い倫理観で世界中から尊敬される道義国家を目指すこと」と要約している。
 しかし、それでは勅語に込められた明治天皇の意思を理解したことにはならないだろう。
 稲田氏の称揚する徳目について、

  爾臣民父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信シ恭倹己レヲ持シ博愛衆ニ及ホシ学ヲ修メ業ヲ習ヒ以テ智能ヲ啓発シ徳器ヲ成就シ進テ公益ヲ広メ世務ヲ開キ常ニ国憲ヲ重シ国法ニ遵ヒ一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ

このように位置付けられているのである。
 既に大日本帝國憲法において大権の保持者とされた天皇が、その臣民に対し最終的に求めているのは「以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ」ということなのであって、その点を無視しては勅語の本義を理解したことにはならない。
 「父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信シ恭倹己レヲ持シ博愛衆ニ及ホシ学ヲ修メ業ヲ習ヒ以テ智能ヲ啓発シ徳器ヲ成就シ進テ公益ヲ広メ世務ヲ開キ常ニ国憲ヲ重シ国法ニ遵ヒ一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ」と並べられた「徳目」は、それ自体が目的なのではなく、「天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼」する上で「朕カ忠良ノ臣民」に期待されている行為規範なのであり、求められているのは「父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信シ恭倹己レヲ持シ博愛衆ニ及ホシ学ヲ修メ業ヲ習ヒ以テ智能ヲ啓発シ徳器ヲ成就シ進テ公益ヲ広メ世務ヲ開キ常ニ国憲ヲ重シ国法ニ遵ヒ一旦緩急アレハ義勇公ニ奉」するような「忠良ノ臣民」による「天壌無窮ノ皇運」の「扶翼」なのである。
 「スヘシ」の文言が示すのは天皇の「臣民」に対する強い意思の表明であることを見落としてはならない。「臣民」に究極的に求められているのは天皇を大権の保持者とした政治体制を永遠に支えることであって、その点に触れずに教育勅語を語ることは勅語の本義に反する行為(明治天皇の大御心を無視した行為)と言わざるを得ない。もっとも、本文で指摘しておいたように、教育勅語には虚偽を戒める項目はない以上、稲田氏が(あるいは籠池氏が、そして日本会議に代表される面々が)教育勅語の本義をどのように捻じ曲げた上で称揚しようが恥じる必要は感じないのであろう。
 勅語の本義を理解せずに称揚するのは当人の浅薄さの証明となるし、本義を理解した上であえて語らないのだとすれば知的な誠実さが疑われる。

 

 

 

 

 

(オリジナルは、投稿日時 : 2017/03/09 21:59 → http://www.freeml.com/bl/316274/299043/

 

 

 

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