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2016年9月

2016年9月16日 (金)

続・二重国籍の幻

 

 蓮舫先生のいわゆる「二重国籍疑惑問題」(最近では弥縫的に「二重戸籍疑惑」と言い換える向きもあるらしいが、その当人が蓮舫先生の発言のブレ―特に用語法上の一貫性のなさ―を平気で非難しているのは、あまりにご都合主義に見える)について、前回の記事(「二重国籍の幻」)の続きである。

 

 

 しかし…、あらためて思うのは、

  蓮舫議員の「台湾籍」というのはいったいどこの国の「国籍」のことなのか??

…ということである。ネトウヨの皆さんだけでなく(というかそれよりは)、 外務大臣、法務大臣、並びに官房長官の見解を伺ってみたい、と思う。

 

 この問題の基本に位置付けられる、わが国の「国籍法」の規定はというと…

 

  第十六条 
  選択の宣言をした日本国民は、外国の国籍の離脱に努めなければならない。

 

 国籍法上、求められているのは、外国の「国籍」の離脱、なのである。

 前回も示したように、蓮舫嬢の日本国籍選択宣言時の、戸籍を始めとする公文書上の「国籍」欄には「中国」と明記されている。

 その上で…

 

  現在の戸籍において国籍として表示される「中国」は、我が国が国家として承認しているところの「中国」を指すものであり、このような取扱いに問題があるとは考えていない。
     (答弁書第二五六号 平成二十三年八月十九日 内閣総理大臣)

 

 これが日本政府の公式見解なのである。

 

 繰り返すが、「台湾籍」というのはどこの国の「国籍」を示すものなのか? もう少し、この線上で、問題を追及してみたい。

 

 

 

 日本国籍選択当時の蓮舫嬢が所持していたのは「台湾」の「旅券(パスポート)」であるが、で、その旅券をそのまま現在に至るまで所持していた(更新されずに失効してはいるのだが)ことが特にネット上で問題とされているわけだが、台湾の旅券(すなわち中華民国政府発行の旅券)の日本の国内法的位置付けについて、まず確認しておきたい。

 

 現在の入管法(出入国管理及び難民認定法)には以下の規定がある。

 

  第二条  出入国管理及び難民認定法及びこれに基づく命令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
  一  削除
  二  外国人 日本の国籍を有しない者をいう。
  三   乗員 船舶又は航空機(以下「船舶等」という。)の乗組員をいう。
  三の二  難民 難民の地位に関する条約(以下「難民条約」という。)第一条の規定又は難民の地位に関する議定書第一条の規定により難民条約の適用を受ける難民をいう。
  四  日本国領事官等 外国に駐在する日本国の大使、公使又は領事官をいう。
  五  旅券 次に掲げる文書をいう。
   イ 日本国政府、日本国政府の承認した外国政府又は権限のある国際機関の発行した旅券又は難民旅行証明書その他当該旅券に代わる証明書(日本国領事官等の発行した渡航証明書を含む。)
   ロ 政令で定める地域の権限のある機関の発行したイに掲げる文書に相当する文書

 

 「台湾」の「旅券」は、日本の入管法上は、当然のことながら「日本国政府の承認した外国政府又は権限のある国際機関の発行した旅券」には相当せず、「政令で定める地域の権限のある機関の発行したイに掲げる文書に相当する文書」として位置付けられる。

 現在では、パレスチナ自治政府と共に「台湾」が「政令で定める地域の権限のある機関」として取り扱われ、両「機関」の発行した旅券は、日本への入出国に際して入管法上の旅券として機能している。

 もちろん、この規定は、台湾旅券の所持者の台湾国籍保有を認定することを避けるために存在するのであって、台湾(あるいは中華民国政府)発行の旅券の所持者を、台湾国民(あるいは中華民国国民)として位置付けようとするものではない。

 

 

 しかし(というかむしろ「しかも」と言うべきか)、あくまでもこれは現在の法制度上の話なのであって、蓮舫嬢が1984年の国籍法の改正に伴い日本国籍を選択し、(戸籍上の記載をそれまでの)中国籍から日本へと変更した際には、台湾旅券は現在とはまったく異なる取り扱いの下にあったのである。

 立命館アジア太平洋大学の山神進教授による「入管法実務解説-第4回」には、以下のように記されている。

 

  なお上記ロのような規定をおき、“台湾護照”をも入管法上の旅券として認めることにした(平成10年)のは、台湾から本邦への入国者の増加にかんがみ、出入国手続きの簡素化を図れるようにしたものである。すなわちそれ以前は、台湾からの入国者は、有効な旅券を所持しないものとして、渡航証明書を取得しなければならず、また、本邦に在留中に一事海外渡航をしようとする場合には再入国許可証の発行を受ける必要があった
     (http://www.legal-info.co.jp/demo/demo_data/20070118_01.pdf

 

 つまり、蓮舫嬢が日本国籍選択宣言をした当時の日本の国内法制度上は、台湾旅券は無効なものとして取り扱われていたことになる。

 当時の蓮舫嬢が所持していたのはわが国の国内法的に既に効力を失なっていた「旅券」なのであり、現在ネット上で非難の的となっているその「旅券」なるものは、更にその後の台湾における更新手続きの不在により台湾の制度上も失効したものであり、いずれにせよ「旅券」としての資格を持たない紙切れに過ぎないのである。

 

 

 国籍法第十六条の「選択の宣言をした日本国民は、外国の国籍の離脱に努めなければならない」との規定を根拠に、日本の国籍選択宣言をした台湾出身者に対し、台湾籍表示(すなわち中華民国政府発行)旅券の台湾行政当局への返納等の手続きを求めてしまえば、台湾籍の表示を「外国の国籍」の表示として取り扱ってしまうことを意味してしまう。窓口レベルでの対応であれば、いかにもありそうな話ではあるが、法務省内の上層ではそのような対応が非常に厄介な事態を引き起こすことは理解されていて当然であり、そのような手続きを要求することは避けられるべきものとして判断されるはずである。要するに、窓口レベルでの対応では台湾での行政上の手続きを求めることもあったであろうが、そのような対応を法務省全体として公式に採用することはあり得ない話であり、台湾出身者の台湾籍旅券の放置の違法性を主張することもあり得ないものと考えられる。法務省としての実際的な対応としては、まずもって旅券の問題に触れないことであり、台湾出身者に「外国の国籍の離脱」の証明を求めないことである。

 

 これ以外に、法理的に問題なく、国家行政としての一貫性を保ち得る対応法はない(註:1)

 台湾籍旅券をめぐるネット上の盛り上がりは、問題の法理的側面をまったく理解していないところでのものに過ぎない(註:2)。要するに、国家行政上の問題として、現実的ではないのである(註:3)。

 

 

 

 蓮舫先生の発言に(特にその用語法に)統一性がないのは、(ネット上で盛り上がっているように)彼女が「嘘つき」であるから(意図的に虚偽を申し立てているから)ではなく、外国籍保有者が日本国籍を取得する際に必要な法的手続きの詳細(「帰化」と「国籍選択」の違い等々をも含む)に関し正確な知識を持たない(つまり「認識不足」ということである)からと理解する方が、発言の統一性のなさを解釈する上で適切であるように思う(加えて、蓮舫先生の発言が、記憶という曖昧なものに依拠し過ぎているという問題がある)。

 この理解は、必ずしも彼女を擁護するものではなく、彼女の法制度上の認識不足に対する批判をも含むものである。

 国籍法の改正を受け、彼女が国籍選択をした当時の在日外国人をめぐる法的状況として、外登法上の義務とされていた指紋押捺制度への反対運動の盛り上がりがある。その中での「認識不足」は、その時代を生きた人間の一人でありながら(十代の後半という年齢ではあるが)、自身をめぐる法制度上の問題に対する無関心の印象を際立たせてしまう。

 もちろん、十代後半という年齢を考慮すれば、そのような現実(それも自らの出自がもたらす現実)から目を逸らしたくなる気持ちも、私には、理解出来るものではある。十代後半の少女にとってデリケートな問題でもあるのであり、一方的に声高に非難するようなデリカシーのなさは避けたい。

 しかし、彼女のその後の経歴にはニュース・キャスターがあり、在日外国人をめぐる法制度上の問題への鈍感さは、職業的に致命的なものでもあるはずだ。

 そして参議院議員である。その上に民進党の代表だ。不勉強と非難されることは甘受すべきであろうし、そもそも蓮舫先生の政治手法は、政敵の一身上のこのような局面を徹底的に利用し尽くす攻撃的なもの(認識不足は許されるものではなく、曖昧な記憶に基く発言の揺れは認められない)ではなかっただろうか。乱暴な二分法と過剰な一般化に基く糾弾的論法は、そもそもが蓮舫先生がお得意としてきたものとの印象も強いのである。

 

 しかし、繰り返すが、出自をめぐる問題はデリケートなものである。(蓮舫先生自身が実際にデリケートな感性の持ち主であるのかどうかはともかくとして)その点に対する想像力を欠いた議論の氾濫には、いささか絶望的な気分にさせられるのも正直なところである。

 

 

 

【註:1】
 1984年の国籍法改正(1985年施行)に伴い、日本国籍選択宣言をした台湾出身者(日本在住の中華民国政府発行の旅券―ただし日本政府によって既にその有効性は否定されているのだが―の所持者)に台湾の行政当局(すなわち中華民国政府)を相手にした国籍離脱の手続き(国籍法上の「外国の国籍の離脱」)の実行を求めてしまえば、台湾出身者の「国籍」が中華民国のものであることを意味させてしまい、1972年の日中国交正常化を受けて中華民国政府発行旅券の有効性を否定した意味が失われてしまう。それでは日本の国家行政が整合性を欠いたものとなってしまうのである。

 前回記事中でも指摘したことだが、「台湾籍」という法的に曖昧な語を用いてしまうことが問題の所在をわかりにくくし議論を混乱に導いているように思われる。
 蓮舫嬢の国籍選択当時の日本の戸籍簿上には「台湾」を「籍」とする台湾出身者は存在せず、すべてが「中国」を「籍」としていたのであるし、その「中国」籍の台湾出身者が所持していた旅券は「台湾」の旅券ではなく中華民国政府発行の旅券(しかも、その旅券は1972年の段階で日本政府により有効性を否定されていた)であった。ちなみに、中華民国の国籍法の条文中には「台湾」の文字はまったく用いられていないことは覚えておいてよい。その中華民国の国籍法が規定するのは、あくまでも中華民国国民の要件であり、中華民国政府発行の旅券がその所持者に保障するのは中華民国の国籍保有であって「台湾」の「籍」ではない(中華民国政府発行のパスポートに「TAIWAN」の文字が併記されるようになったのは2003年になっての話である)。「台湾籍」という用語は、中華民国(そして台湾において現実の行政の主体となってもいる中華民国政府)の存在を隠蔽するのに役立つことは確かだが、今回の二重国籍問題を正確に考える上では混乱の原因となっているように見える。実際、この点に鈍感なところで展開される主張は、多くの場合、的外れなものとなっている。

 

【註:2】

 民進党代表選に立候補している蓮舫代表代行は13日午前、記者会見し、父親の出身地である台湾(中華民国)籍が残っていたことを明らかにした。
 台北駐日経済文化代表処(大使館に相当)から12日夕に確認の連絡を受けたという。蓮舫氏は「記憶の不正確さから混乱を招き、おわびする」と謝罪した。
 蓮舫氏は旧民主党政権で、台湾籍が残ったまま閣僚を務めていたことになり、波紋が広がりそうだ。ただ、15日投開票の代表選を辞退する考えはないと強調した。
 蓮舫氏はこれまで、日本と台湾のいわゆる「二重国籍」を否定。17歳だった1985年に日本国籍を取得した際、父親とともに代表処へ出向き、台湾籍放棄の手続きを取ったと説明していた。しかし、手続きが済んでいたかは「確認中」として、6日に改めて台湾籍放棄の手続きを申請した。
 蓮舫氏は会見で「(台湾籍放棄)手続きが完了すれば、籍に関することは最終的に確定する」と述べ、手続きが終わるまでなお時間を要するとの認識を示した。
     (時事通信 2016/09/13 10:45)

 この報道は興味深い。

 ネット上で非難されているように、蓮舫先生の「台湾籍放棄」は台湾への「裏切り」と断言し得るのか? 結果的に「台湾籍」を「国籍」扱いすることになり、むしろ台湾当局の利益に適った行為と言い得るのではないのか?

 蓮舫先生の「台湾籍放棄」は、台湾当局にとってネガティブな行為なのかどうか?
 この点については大いに議論の余地がある。

 今回の蓮舫先生の「台湾籍放棄」が、国籍法での「外国の国籍の離脱」をあらためて実行したものなのだとすれば(実際、ネット上ではそのように解釈され、非難されているわけである)、蓮舫先生の「台湾籍」は「外国の国籍」として位置付けられることになってしまう。
 これは蓮舫先生個人の問題にとどまるものではなく、台湾籍一般が台湾の「国籍」として位置付けられたことを意味してしまう。
 これはむしろ台湾当局にとっては歓迎すべき事態とも言い得るのである(もっとも、蓮舫先生自身がその点について自覚的であったとは思い難いが)。

 果たして蓮舫先生は台湾のナショナリズムに反する行為をしたのか?
 それとも台湾のナショナリズムに貢献する行為をしたのか?
 どのような答えが適切と言い得るのか、この問いに答えることは意外に難しい。

 いずれにせよ、ネット上での蓮舫攻撃がエスカレートすればするほど(そしてそれが現実的な影響力を持ってしまえば)、実際問題として、日本政府は厄介な立場に追い込まれるのである。日本政府としては特に見解を示さずに静観するのが穏当な対処法であろう。

 

【註:3】
 この点に関して参考になるのは、台湾出身者の場合の日本国籍選択の手続きと日本への帰化の手続きの違い、及び台湾籍保有者と一般の外国籍保有者の帰化申請手続きの違いである(以下の行文では、煩雑を避けるために「台湾籍」の語を用いる)。
 前者であれば、(現行法では)父母のどちらかが日本国民であれば、その子にも日本国籍が与えられ、その成人に際して国籍の選択が求められる。これはいわば、それまでの二重国籍状態から、当人の責任において父母いずれかの国籍を選択することが(多重国籍保有を認めな我が国の)国籍法で義務付けられているということである(その行使においては国籍選択の「権利」と言い得るかも知れない)。
 後者については、台湾籍保有者の「帰化申請」に際しては、日本国籍取得(帰化)手続きの前提として、台湾籍からの離脱が求められている(http://kikajp.net/taiwan_kika_service.html)。台湾籍保有者を無国籍者状態に置いた上で、あらためて日本国籍取得(帰化)の申請に進むのである。これは国籍法の定める一般的な帰化の手続きとは著しく異なる。まず、国籍法の規定と、法務省のサイトにある「国籍Q&A」から、一般的な帰化の条件・手続きについて確認しておきたい。

第四条 
 日本国民でない者(以下「外国人」という。)は、帰化によつて、日本の国籍を取得することができる。
 2 帰化をするには、法務大臣の許可を得なければならない。
第五条 法務大臣は、次の条件を備える外国人でなければ、その帰化を許可することができない。
  一 引き続き五年以上日本に住所を有すること。
  二 二十歳以上で本国法によつて行為能力を有すること。
  三 素行が善良であること。
  四 自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によつて生計を営むことができること。
  五 国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によつてその国籍を失うべきこと。
  六 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入したことがないこと。
 2 法務大臣は、外国人がその意思にかかわらずその国籍を失うことができない場合において、日本国民との親族関係又は境遇につき特別の事情があると認めるときは、その者が前項第五号に掲げる条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。
     (国籍法 
http://www.moj.go.jp/MINJI/kokusekiho.html

Q8: 帰化とは,何ですか?
 帰化とは,その国の国籍を有しない者(外国人)からの国籍の取得を希望する旨の意思表示に対して,国家が許可を与えることによって,その国の国籍を与える制度です。日本では,帰化の許可は,法務大臣の権限とされています(国籍法第4条)。
 法務大臣が帰化を許可した場合には,官報にその旨が告示されます。帰化は,その告示の日から効力を生ずることとなります(国籍法第10条)。

Q9: 帰化の条件には,どのようなものがありますか?
 帰化の一般的な条件には,次のようなものがあります(国籍法第5条)。
 また,これらの条件を満たしていたとしても,必ず帰化が許可されるとは限りません。これらは,日本に帰化するための最低限の条件を定めたものです。
1  住所条件(国籍法第5条第1項第1号)
  帰化の申請をする時まで,引き続き5年以上日本に住んでいることが必要です。なお,住所は,適法なものでなければなりませんので,正当な在留資格を有していなければなりません。
2  能力条件(国籍法第5条第1項第2号)
  年齢が20歳以上であって,かつ,本国の法律によっても成人の年齢に達していることが必要です。
3  素行条件(国籍法第5条第1項第3号)
  素行が善良であることが必要です。素行が善良であるかどうかは,犯罪歴の有無や態様,納税状況や社会への迷惑の有無等を総合的に考慮して,通常人を基準として,社会通念によって判断されることとなります。
4  生計条件(国籍法第5条第1項第4号)
  生活に困るようなことがなく,日本で暮らしていけることが必要です。この条件は生計を一つにする親族単位で判断されますので,申請者自身に収入がなくても,配偶者やその他の親族の資産又は技能によって安定した生活を送ることができれば,この条件を満たすこととなります。
5  重国籍防止条件(国籍法第5条第1項第5号)
  帰化しようとする方は,無国籍であるか,原則として帰化によってそれまでの国籍を喪失することが必要です。なお,例外として,本人の意思によってその国の国籍を喪失することができない場合については,この条件を備えていなくても帰化が許可になる場合があります(国籍法第5条第2項)。
6  憲法遵守条件(国籍法第5条第1項第6号)
  日本の政府を暴力で破壊することを企てたり,主張するような者,あるいはそのような団体を結成したり,加入しているような者は帰化が許可されません。

 なお,日本と特別な関係を有する外国人(日本で生まれた者,日本人の配偶者,日本人の子,かつて日本人であった者等で,一定の者)については,上記の帰化の条件を一部緩和しています(国籍法第6条から第8条まで)。

Q10: 帰化には,どのような手続が必要ですか?
1  帰化許可申請の方法
  本人(15歳未満のときは,父母などの法定代理人)が自ら申請先に出向き,書面によって申請することが必要です。その際には,帰化に必要な条件を備えていることを証する書類を添付するとともに,帰化が許可された場合には,その方について戸籍を創設することになりますので,申請者の身分関係を証する書類も併せて提出する必要があります。
  帰化申請に必要となる主な書類については,Q11をご覧ください。
2  申請先
  住所地を管轄する法務局・地方法務局

Q11: 帰化許可申請に必要な書類には,どのようなものがありますか?
  帰化許可申請に必要となる主な書類は,次のとおりです。
1  帰化許可申請書(申請者の写真が必要となります。)
2  親族の概要を記載した書類
3  帰化の動機書
4  履歴書
5  生計の概要を記載した書類
6  事業の概要を記載した書類
7  住民票の写し
8  国籍を証明する書類
9  親族関係を証明する書類
10  納税を証明する書類
11  収入を証明する書類
12  在留歴を証する書類

 国籍を証する書面及び身分関係を証する書面については,原則として本国官憲が発給したものを提出する必要があります。
 なお,申請者の国籍や身分関係,職業などによって必要な書類が異なりますので,申請に当たっては,法務局・地方法務局にご相談ください。
     (国籍Q&A 
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji78.html

 この国籍法の規定及び法務省による「Q&A」を読めば分かるように、一般的な帰化申請の手続きに際しては、台湾籍保有者の場合と異なり、たとえば国籍法では「国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によつてその国籍を失うべきこと」とあるように、外国籍からの離脱は日本国籍の取得後(日本の国籍の取得によつてその国籍を失うべき)に必要なものとされており、申請の前提として無国籍状態になることは求められていない。
 更に「Q&A」では、

   帰化しようとする方は,無国籍であるか,原則として帰化によってそれまでの国籍を喪失することが必要です
  帰化許可申請に必要となる主な書類は,次のとおりです。
   8  国籍を証明する書類
   国籍を証する書面及び身分関係を証する書面については,原則として本国官憲が発給したものを提出する必要があります。

…として、それまでの国籍の喪失(外国籍からの離脱)は、「帰化によって」の文言が明らかにしているように、帰化が実現した後(日本国籍取得の後)に必要なものとされているのだし、帰化許可申請の際に必要となるのは無国籍状態の証明ではなく、申請提出時の「国籍を証明する書類」なのである。これは台湾籍保有者の場合と著しく異なる。
 まさにここに日本の国家行政上の整合性がいかに追求されているのかが読み取られなければならない。「台湾籍」を台湾の「国籍」と見做してしまう事態を避けるために(中華民国政府を国家を代表する政府と位置付けてしまうことを避けるために)、台湾籍(中華民国国籍)から日本国籍への帰化(そしてその後の「台湾籍」からの離脱)という手続きではなく、無国籍者による帰化申請という形式を法務省はわざわざ求めているということなのである。もちろん、台湾籍保有者の無国籍化の手続きを実行するのは台湾の行政当局(中華民国政府)なのであるが、(その事実を視野の外に置くこと―意図的に無視すること、とにかく触れないこと―によって)日本政府が窓口で対面するのは既に無国籍者となった帰化申請者となるとの曲芸的論法ということなのである。中華民国政府による「国籍を証する書面」を認めてしまえば、中華民国の「国籍」を認めてしまうことになってしまい、日本の国家行政から形式的な整合性が失われてしまうのである。

 

 

 

 

 

(オリジナルは、投稿日時 : 2016/09/16 18:39 → http://www.freeml.com/bl/316274/285239/

 

 

 

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2016年9月 9日 (金)

二重国籍の幻

 

 このところのネトウヨ系(あるいは自称保守系)大興奮ニュースとして、党内選挙で民進党の代表になっちゃうかも知れない蓮舫先生をめぐる「二重国籍疑惑問題」があったりする。

 

 蓮舫先生については、ニュース・キャスター時代の彼女を、故ナンシー関が見事に「社会派バカ」の一言で斬って捨てたのを今でも忘れ難く思う私ではあるが、そしてその印象が今に至るまで変更されることもなく来た―もちろんささやかな私の偏見に過ぎないのであろう―のであるが、つまり現在の政治家としての蓮舫先生を支持する気にもまったくならない私なのではあるが、今般の(産経新聞と百田尚樹先生とを含む)ネトウヨ系(あるいは自称保守系)の盛り上がりには冷ややかな視線を送らざるを得ないのもまた現実なのであった。

 

 

 

 戸籍簿上の国籍表記に関しては、昭和39年の時点で、台湾出身者については国籍を「中国」と表記するようにとの法務省からの通達がある(註:1)。

 1967年(昭和42年)生まれの蓮舫先生は、出生当時の国籍法上、(日本国民である母の持つ日本国籍ではなく)父の出身地である台湾を意味する「中国」を自身の国籍として日本の公文書に記載することを求められていたことになる。

 

 言うまでもないことであるとは思うが、そもそも「台湾」は地域名であるが国名ではない。「台湾」は、かつては大日本帝國の支配領域であったが、「先の大戦(つまり大東亞戦争)」での大日本帝國の敗戦後は、大陸を追われた国民党政権の支配領域として「中華民国」を国名として名乗ることとなった。昭和39年(1964年)の法務省通達にある「中国」は、この「中華民国」の略称(あるいは通称)ということになる。その後、1972年の「日中国交正常化」により、日本国は大陸に本拠を置く中国共産党政権下の「中華人民共和国」を「中国」の正統な国家として承認し、国民党政権下の台湾の「中華民国」とは断交した(その時点で台湾の正統的な支配者は、台湾の国民党政府ではなく大陸の中国共産党政府と見做されることとなった)。

 しかしそこで台湾出身者の国籍表記はどうなったかというと「中国」のまま! つまり、日中国交正常化後、日本国内公文書上の「中国」は、従来の「中華民国」としてではなく、「中華人民共和国」として読み替えられ取り扱われることで済まされてしまったのである(註:2)。

 

 蓮舫先生は、出生時は当時の国籍法の規定と法務省通達に従い、台湾出身である父の国籍表記である「中国」(ただし中華民国を意味する)の国籍保有者として取り扱われ、「日中国交正常化後」には「中国」の正統な国家として日本政府に承認された(台湾をも領域とすることとされている)中華人民共和国(もちろんこちらも略称は「中国」である―ちなみに日本国の外務省も、そして中華人民共和国の外務省も、この表記を認めている 註:3)の国籍保有者として取り扱われるようになってしまったわけである。

 

 再確認しておくと、1967年の出生時は台湾を領域的に実効支配する国民党政権下の中華民国国籍を意味する「中国」の国籍保有者として取り扱われ、「日中国交正常化」後は台湾をも含む「中華人民共和国」の国籍保有者であることを意味する「中国」籍の保有者として、日本の国内法上の取り扱いを受けていたのである(註:4)。

 日常語の世界の話としてはともかく、日本国の公文書(少なくとも法務省民事局管轄の戸籍簿)上は、「台湾籍」である「蓮舫」なる人物が存在したことはない、ということになる。

 

 で、1984年の国籍法の改正(母が日本国籍保有者であれば、その子に日本国籍が認められるようになった)により、当時の若き蓮舫嬢は、あらためて国籍の選択を迫られることになる。そこで彼女は(父のアドバイスもあったらしいが)日本国籍をあらためて選択したのであった。

 で、ネットで騒がれているのは、その際に「台湾籍を離脱していないのではないのか?」との「疑惑」であるわけだが、先に説明したように、そもそも日本の戸籍簿上には、国籍(帰属先の国家)を「台湾」とする台湾出身者は存在しない。

 その事実を再確認した上で、実際に国籍欄に記載されていた「中国」(ここでは中華人民共和国を意味する―蓮舫嬢が日本国籍を取得した時期が日中国交正常化後なので)の国籍からの離脱の手続きの実行の有無は問われ得る話ではあるだろう。

 ここで焦点となるのは、中華人民共和国の国籍法上の他国の国籍取得者への対応である。中華人民共和国の国籍法上では二重国籍の保有は認められず、他国の国籍を取得した時点で「中華人民共和国」の国籍は失われる。つまり、若き蓮舫嬢が日本の国内法の規定に基づき日本国籍の取得を選択した時点で、中華人民共和国の国内法に基づき、中華人民共和国の国籍は自動的に失われていることになるのである(註:5)。当人による中国籍離脱の手続きは(中華人民共和国の法制度上は)必要とされていないのだ(註:6)。

 実際問題として考えれば、かつて彼女が北京大学に留学した際には、彼女は日本国のパスポートを使用していた―つまり日本国民として「渡航」した―のであり、中華人民共和国の国籍保有者として「帰国」したのではない(そのようなことは中華人民共和国の法制度上あり得ない話なのである)。

 ただし、台湾の公文書上の問題としては、戸籍上の「籍」は残されている可能性は残る―しかし、台湾は日本国から国家として認められていないので、日本の法理上は蓮舫先生の台湾「国籍」なるものは存在しないわけでもあるし、中華人民共和国の法理上も既に中国の国籍を喪失している人物の籍が地方行政文書(台湾は中華人民共和国政府からすれば国内の一地方に過ぎない)に残されているのは国内行政上の瑕疵でしかない(戸籍記載の訂正は、既に国籍を喪失した人物の責に帰するものではなく、行政官の職務に属する問題である―もっとも、あくまでもこれは形式的な話であって、現実の中華人民共和国政府は、現地台湾の行政官に指示命令する手段を持たないのであるが)し、そもそも台湾の住民の多くは自身の帰属先を「中華民国」と考えているのであって、必ずしも台湾なる国家の国籍の保有者などとは考えていない―もちろん、「台湾」を自身の帰属先と考え、大陸から独立した領域としての「台湾」を希求する台湾ナショナリストも存在する(註:7)事実を無視するべきではないが―はずである。

 安易に「台湾籍」という語を用いて問題を論じようとする風潮には、(公文書上の用語法に象徴される)問題の法理的側面への無理解を感じさせられる。本質的に法理上の問題であるにもかかわらず、排外主義的心情の上に築かれた妄想の拡大再生産に議論(蓮舫先生への批判)が終始している印象である。いずれにせよ、日本国の国内法的にも、中華人民共和国の国内法の上でも、蓮舫先生の二重国籍問題なるものは最初から存在しないのである(註:8)(この点に関しては、更に「続・二重国籍の幻」の中で、蓮舫先生の所持していた「台湾籍」の「旅券」の国内法的位置付けに焦点を合わせ論じてみたのでそちらも参考にしていただきたい)。

 

 

 

【註:1】

   戸籍における台湾出身者の国籍表記に関する質問主意書
第177回国会(参議院) 質問第二五六号 平成二十三年八月九日 大江康弘(自由民主党)

 現在、台湾人女性が日本人男性の妻となる場合、台湾出身者が日本に帰化する場合、又は台湾出身者が日本人の養子となる場合など、台湾出身者の身分に変動があった場合、戸籍における国籍や出生地は「中国」あるいは「中国台湾省」と表記される。
 戸籍において、台湾出身者の国籍を「中国」と表記しているのは、実に今をさかのぼること四十七年も前の昭和三十九年六月十九日付で出された法務省民事局長による「中華民国の国籍の表示を「中国」と記載することについて」という通達が根拠になっていると思われる。

 昭和三十九年といえば、東海道新幹線が開業し、東京オリンピックが開催された年で、日本が中華民国と国交を結んでいた時代である。しかしその後、日本は中華民国と断交して中国(中華人民共和国)と国交を結ぶなど、日本と台湾・中国との関係は大きく変わっている。
 このような中、東京都は平成二十年五月、住民基本台帳の表記について昭和六十二年の通知が現状に即さず、正確ではないとの判断から、台湾からの転入・台湾への転出の際には「台湾」の表記を認めるという通知を出している。また、平成二十一年七月の法改正による外国人登録証明書の在留カード化措置において、台湾出身者の「国籍・地域」表記は「中国」から「台湾」に改められることになる。
 現実的にも、中国が台湾を統治したことは一度もない。また、日本政府は観光客に対するノービザや運転免許証について台湾とは相互承認を行い、中国とは行っていないなど、明確に台湾と中国とを区別している。さらに、台湾では天皇誕生日祝賀会が開催されたり叙勲を復活させたりするなど、中国とは状況が異なっている事例には事欠かない。
 従って、五十年前とは様変わりしている事情や現実を踏まえ、戸籍における台湾出身者の国籍表記を早急に改めるべき状況にあると認識している。
 そこで、以下のとおり質問する。

一 戸籍において、台湾出身者の国籍や出生地を「中国」や「中国台湾省」と表記するのは、昭和三十九年六月十九日付で出された法務省民事局長による「中華民国の国籍の表示を「中国」と記載することについて」という通達が根拠になっていると思われるが、それで相違ないか。もし違うというのであれば、根拠となっている法律や通達などを明らかにされたい。

二 戸籍において、台湾出身者の国籍を「中国」と表記することは、現状に即し正確だと認識しているか、政府の認識を明らかにされたい。

三(略)
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/177/syuh/s177256.htm
 http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/177/toup/t177256.pdf

   参議院議員大江康弘君提出戸籍における台湾出身者の国籍表記に関する質問に対する答弁書
答弁書第二五六号 平成二十三年八月十九日 内閣総理大臣(菅直人)

一について

 御指摘のとおりである。

二について

 お尋ねの「現状」の意味が必ずしも明らかではないが、現在の戸籍において国籍として表示される「中国」は、我が国が国家として承認しているところの「中国」を指すものであり、このような取扱いに問題があるとは考えていない。

三について(略)  
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/177/touh/t177256.htm
 http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/177/toup/t177256.pdf

 

 もちろん、この内閣総理大臣の答弁内容は、民主党政権での独自見解などではなく、歴代の自民党政権下でも受け継がれてきた認識と考えるべきものである(大江議員は、「五十年前」から修正されることなく続く戸籍記載上の問題を指摘しているのであり、その五十年間のほとんどの時期に政権を担当し続けたのは他ならぬ自由民主党なのであるから)。

 

〔追記:2016/09/11〕
 自由民主党政権下での森山真弓法務大臣が以下の答弁をしてるようである。

 04月23日(2002年・平成14年)
 外登証問題で、西村眞悟・衆院議員が法務委員会において質疑。森山真弓法相は「外国人登録法を昭和27年に制定して以来、台湾出身者は『中国』と表記。これは昭和47年9月の日中国交正常化の前も後も変わっていない」と答弁。
http://freeasia2011.org/japan/archives/1510

 この通りだとすれば、大江議員に対する菅首相の答弁は、大枠として、明らかに自民党政権の姿勢を引き継いだものと位置付けられるだろう。
 「外国人登録法を昭和27年に制定して以来、台湾出身者は『中国』と表記。これは昭和47年9月の日中国交正常化の前も後も変わっていない」との森山法相の答弁からは、「昭和三十九年六月十九日付で出された法務省民事局長による「中華民国の国籍の表示を「中国」と記載することについて」という通達」に先立ち、外国人登録法については昭和27年の制定以来、「台湾出身者は『中国』と表記」していたことがわかる(そしてそれが「昭和47年9月の日中国交正常化の前も後も変わっていない」ということも)。
 また、昭和39年の「戸籍」上の表記をめぐる「通達」は、あらためて国籍に関する戸籍上の記載と外国人登録に際しての記載の整合を図ろうとしたものと推測し得る(縦割りの行政の中で、横断的に運用上の細部の整合を図るためには多大な労力が必要とされるという一事例にも見える)。

 

【註:2】
 当事者である台湾出身者の帰属意識に関係なく、それまでの中華民国国籍保有者が中華人民共和国籍保有者として見做されるという書類処理上の解釈変更により、「日中国交正常化」という(厄介な)事態への対応が図られたわけである。
 この、台湾出身者の戸籍上の法的身分の解釈変更(帰属する国家―国籍―の変更)という対応策は、日本国の行政官の負担の軽減には役立つものであっただろう。しかし、日本国の行政組織からそれを求められた際に、台湾出身者の出身地における身分の公的証明を発行するのは中華人民共和国政府の行政窓口ではなく、出身地である台湾で依然として実際の行政組織を運用する中華民国政府に属する行政官なのである。
 法的身分については中華人民共和国の国籍保有者とされた台湾出身者は、しかし同時に中華人民共和国のコントロールの及ばない台湾現地の(もちろん、日本国内の出先機関も含むものだが)行政組織、すなわち中華民国を名乗る行政組織によって台湾における法的身分の証明を受けることとなったのである。
 日本の行政官の負担の軽減の結果、台湾出身者には、より複雑な状況がもたらされ、ある種の行政手続きに際し、より大きな負担(当事者の帰属意識の無視は、それだけで当事者には心理的負担となる)が必要となってしまったわけである。
 いずれにせよ、当事者の帰属意識が完全に無視された中で、「日中国交正常化」を受けての行政処理の変更が行われ、様々な意味において台湾出身者の負担を増大させた事実には気付いておくべきだろう。
 今回の「二重国籍疑惑問題」も、このような歴史的背景の中で理解しなければならない。

 

【註:3】
 たとえば日本の外務省の報道発表において「中国」の名称が使用されている。

 → 第11回日中韓高級事務レベル協議(結果)(報道発表)(平成28年8月21日)
   (http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_003612.html

 中華人民共和国の外務省も、自国を指すのに「中国」の名称を使用している。

 → 日本に慎重な行動を望む 参院選改憲派勝利で中国外交部(2016-07-12)
   (http://www.china-embassy.or.jp/jpn/fyrth/t1379421.htm

 ちなみに、台湾すなわち中華民国の国籍法の条文中でも、自称として「中国(中國)」が併用されている(特に、昭和39年の法務省通達から「日中国交正常化」、そして蓮舫嬢の日本国籍取得に至る時期に施行されていた条文を示してみた)。

 → 國籍法 (民國18年)
   (https://zh.wikisource.org/wiki/%E5%9C%8B%E7%B1%8D%E6%B3%95_(%E6%B0%91%E5%9C%8B89%E5%B9%B4)

 

【註:4】
 先に示した通り、この件に関しての日本政府見解は、

  現在の戸籍において国籍として表示される「中国」は、我が国が国家として承認しているところの「中国」を指すものであり、このような取扱いに問題があるとは考えていない。
     (答弁書第二五六号 平成二十三年八月十九日 内閣総理大臣)

 

【註:5】

     中華人民共和国国籍法
第1条
中華人民共和国国籍の取得、喪失及び回復は、すべて本法を適用するものとする。
第2条
中華人民共和頃は多民族による統一国家で、各民族に属する者は、すべて中国の国籍を有する。
第3条
中華人民共和国は中国の公民が2重国籍をもつことを認めない。

第4条
父母の双方又は一方が中国の公民で、本人が中国で生まれた場合は、中国の国籍を有する。
第5条
父母の双方又は一方が中国の公民で、本人が外国で生まれた場合は、中国の国籍を有する。ただし、父母の双方又は一万が中国の公民であるとともに外国に定住し、本人が出生と同時に外国の国籍を取得している場合には、中国の国籍を有しない。
第6条
父母が無国籍又は国籍不明で、中国に定住し、本人が中国で生まれた場合は、中国の国籍を有する。
第7条
外国人又は無国籍者は、中国の憲法と法律を遵守する意思を表示し、次の条件の1つを備えた場合には、申請、許可を経て中国国籍に入籍することができる。
 1 中国人の近親であること。
 2 中国に定住していること。
 3 その他の正当な理由があること。
第8条
中国国希への入考を申請して許可された者は、中国の国籍を取得する。中国の国籍入籍を許可された者は、もはや外国の国籍を留保することができない。
第9条
外国に定住している中国公民で、自己の意思によって外国の国籍に入籍し、若しくはこれを取得した者は、中国国籍を自動的に失う。

第10条
中国の公民は、次の条件の1つを備えた場合には、申請許可を経て、中国国籍を離脱することができる。
1 外国人の近親であること。
2 外国に定住していること。
3 その他の正当な理由があること。
第11条
中国の国籍離脱を申請して許可された者は、中国の国籍を失う。
第12条
国家の公務員と現役の軍人は、中国の国籍を離脱することができない。
第13条
かって中国の国籍を有したことがある外国人は、正当な理由がある場合には、中国国籍の回復を申請することができる。中国国籍の回復を許可された者は、もはや外国の国籍を留保することができない。
第14条
中国の国籍の取得、離脱及び回復については、第9条に規定した場合を除き、必ず申請の手続きを踏まなければならない。18歳末満の者は、その父母又はその他の法定代理人が代わって申請する。
第15条
国籍の申請を受理する機関は、国内では地元の市・県の公安局であり、外国では中国の外交代表機関と領事機関である。
第16条
中国国籍の入籍、離脱及び回復に関する申請は、中華人民共和国公安部がこれを審査し、許可する。許可された者には、公安部が証明書を交付する。
第17条
本法の公布される前に中国の国籍を取得し、又は中国の国籍を失つた場合には、それは引き続き有効である。
第18条
本法は、公布の日から施行する。
http://www011.upp.so-net.ne.jp/cnf/kakkoku_kokusekihou/china.html

 

【註:6】
 ただし、中華民国の国籍法では、他国籍取得による国籍離脱(国籍喪失)には内政部の許可が必要とされ、しかも年齢の制限があった。

      中華民国国籍法
第10条
中国人で、左の各号の1に該当する者は、中華民国の国籍を喪失する。
 (1) 外国人の妻となつた者で、国籍の離脱を申請し、内政部の許可を経た者。
 (2) 父が外国人であって、その父が認知した者。
 (3) 父が知れないか、または認知しない者であって、母が外国人であり、その母が認知した者。
② 前項第2号および第3号の規定により、国籍を喪失する者は、中国法により未成年であるか、または中国人でない者の妻である者に限る。
第11条
自己の志望により外国の国籍を取得する者は、内政部の許可を得て中華民国の国籍を喪失することができる。ただし、満20歳以上であって、中国法により能力を有する者に限る。

http://www011.upp.so-net.ne.jp/cnf/kakkoku_kokusekihou/china.html

 ちなみにこの日本語訳は「子どもの国籍を考える会」のサイトにあるものだが、どのような理由によるのかは不明だが、現行法(國籍法 (民國95年))の文言によるものではない。ただし、幸いなことに蓮舫嬢が日本国籍を取得した当時( 國籍法 (民國18年))の条文の文言の翻訳となっており、今回の問題の理解にはとても役に立つ。
  蓮舫先生当人がインタビュー(http://news.yahoo.co.jp/feature/349)で明らかにしているところによれば、蓮舫嬢の日本国籍選択・取得手続きは、日本の国籍法改正施行(1985年1月1日)の直後の同年同月21日であり、一方で当時の中華民国の出先機関である亜東関係協会に「国籍喪失」の手続きのために出向いている。
 「台湾語」での手続きは父が代行し、台湾語の理解出来なかった蓮舫嬢にはやりとりの内容はわからなかったという。しかし当時(17歳の高校生)の蓮舫嬢は、それで国籍喪失の手続きは終了したものと考えていた。
 いわゆる「台湾籍」が残存し現在に至っているのだとすれば、「自己の志望により外国の国籍を取得する者は、内政部の許可を得て中華民国の国籍を喪失することができる。ただし、満20歳以上であって、中国法により能力を有する者に限る」との国籍法の規定(満20歳以上)が、当時17歳の高校生であった蓮舫嬢を阻んだのだと推測される。成人後の「国籍喪失」の再申請がないままに現在に至り、いわゆる「台湾籍」が残されている可能性はある。
 蓮舫嬢の当時の年齢を考えれば、日本国籍の取得・中華民国国籍の喪失という二つの法的手続きの詳細を把握していなかったことは、声高に非難されるような話でもないように思われる。

 もっとも、日本国の戸籍簿上は、「日中国交正常化」の時点より中華民国の国籍保有者は中華人民共和国の国籍保有者として取り扱われており、国内法的に既に中華民国の国籍保有者と見做されていない蓮舫嬢に中華民国の国籍喪失手続が必要なものなのかどうかには議論の余地が残る(本文で明らかにしているように、私はその必要性を疑っている)。

 参考のために、中華民国の国籍法の当時の条文と現行の条文を原文で示しておく。

当時の国籍法条文(國籍法 (民國18年)
第十條
  中國人有左列各款情形之一者,喪失中華民國國籍:  
  一、為外國人妻,自請脫離國籍,經內政部許可者。  
  二、父為外國人,經其父認知者。  
  三、父無可考或未認知,母為外國人經其母認知者。  
  依前項第二、第三款規定喪失國籍者,以依中國法未成年或非中國人之妻為限。
第十一條
  自願取得外國國籍者,經內政部之許可,得喪失中華民國國籍。但以年滿二十歲以上,依中國法有能力者為限。

現行法条文( 國籍法 (民國95年)
第十一條 (喪失國籍之情形)
  中華民國國民有下列各款情形之一者,經內政部許可,喪失中華民國國籍:  
  一、生父為外國人,經其生父認領者。  
  二、父無可考或生父未認領,母為外國人者。  
  三、為外國人之配偶者。  
  四、為外國人之養子女者。  
  五、年滿二十歲,依中華民國法律有行為能力人,自願取得外國國籍者。  
  依前項規定喪失中華民國國籍者,其未成年子女,經內政部許可,隨同喪失中華民國國籍。

 

【註:7】
 固有名としての「台湾」は、行政上の地域名であると同時に、住民自身の出自・アイデンティティー構築の基盤としても機能する。
 まず台湾には先住民が存在し、その上に大陸系の人々が存在する。大陸系の人々にしても、清朝期からの住人の子孫もいれば、日本による植民地統治期の移住者(戦前からの住民は本省人と呼ばれる)、そして「戦後」に支配者として振る舞った国民党政府に連なる人々(いわゆる外省人)の子孫も存在する。それぞれに帰属意識の在り方は異なり、国民党系の外省人にとっては台湾は「中華民国」であっても、戦後の長い時期に外省人による統治から政治的に排除されていた本省人にとっては、必ずしも国民党の「中華民国」が帰属意識の対象であるわけではない(実際、2003年からは、中華民国政府発行のパスポートに「TAIWAN」の文字が併記されるようになってもいる)。
 戦後の歴史の中での本省人と外省人の対立の構図と同時に、大陸の共産党政権に対する独立的意識は両者に共有されてもおり、台湾住民の帰属意識を考える際には過剰な一般化への誘惑を避けねばならない。
 その上に重ねて、日本在住の台湾出身者の帰属意識の問題があり、彼らの間では、日本国内の公文書上での国籍表記を「中国」ではなく「台湾」とすることも求められており、総務省管轄の外国人住民基本台帳の「国籍・地域」欄等では既に実現されている。

 

【註:8】
 蓮舫先生の二重国籍疑惑については、国際法の原則的には日本国と中華人民共和国の(日本と中国の間の)二国間問題なのであり、そこでの台湾はあくまでも中国内の一地方として法的に位置付けられる。その構図の下では、既に本文中に示したように、中華人民共和国の国籍法上の身分の変更の事実が中華人民共和内の一地方の行政文書の記載内容より優先されるのは当然の話である。蓮舫嬢の日本国籍取得により、彼女の中国籍は自動的に抹消され、一地方の行政文書上の記載の残存放置は、彼女の責ではなく地方行政官の職務の問題なのである。
 しかし、このような認識は、台湾のナショナリストには容認し難いものでもあろう。
 今回の「台湾籍」をめぐる問題の背後には、国際社会の中での国家としての正統性をめぐる問題が潜んでおり、同時に台湾住民自らの、そして日本国内の台湾出身者の、帰属意識の対象の選択の問題―アイデンティティーの問題(しかも、むしろそこではナショナル・アイデンティティーの流動性が暴露されてしまってもいるのである)―が複雑に重なり合っているのである。産経新聞や百田尚樹先生による浅薄な非難とは別に、我々の属する近現代史の問題として、深く掘り下げるに値する話題であることも確かであろう。

 

 

 

 

 

(オリジナルは、投稿日時 : 2016/09/08 21:46 → http://www.freeml.com/bl/316274/284636/

 

 

 

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