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2015年3月30日 (月)

資料:いわゆる「従軍慰安婦」問題をめぐる、安倍晋三氏発言と安倍内閣見解の推移

 

 

《安倍晋三氏発言と安倍内閣見解の推移》

 

 〈政権獲得前〉

  自民党の安倍晋三元首相は27日、産経新聞のインタビューに応じ、次期衆院選について「政界再編の第一歩と位置づけなければならない。混乱を避けては再編はできない」と述べた。その上で再編のカギを握る大阪市の橋下徹市長率いる大阪維新の会に関し、「違いはあるが、違いを見つけるよりも骨格が同じかどうか、貫く精神が共有できるかどうかだ。橋下氏は戦いにおける同志だと認識している」と表明した。
  次期衆院選とその後の政界再編に向け、橋下氏との連携、協力を深めていく考えを示したとみられる。橋下氏と共有できる具体的な政策の柱については、(1)教育改革(2)憲法改正(3)慰安婦問題をはじめとする歴史認識分野-などを挙げた。
  特に慰安婦問題に関し、橋下氏が「強制連行を直接示すような資料はない」とした平成19年の安倍内閣の閣議決定を引用し、慰安婦募集の強制性を認めた河野談話について「証拠に基づかない内容で最悪」と批判したことを「大変勇気ある発言だった」と評価した。
  再び自民党が政権の座に就いた場合は「(教科書で周辺諸国への配慮を約束した)宮沢喜一官房長官談話、河野談話、(アジア諸国に心からのおわびを表明した)村山富市首相談話、全ての談話の見直しをする必要がある。新たな政府見解を出すべきだろう」との考えを明らかにした。
     (
産経新聞 2012/08/28 00:57

 

 もちろん、問題の中心となるのは、

  宮沢喜一官房長官談話、河野談話、村山富市首相談話、全ての談話の見直しをする必要がある。新たな政府見解を出すべき

…との文言である。

 

 〈政権獲得後〉

  安倍晋三首相は15日の参院予算委員会で、先の大戦を含めた過去の中国との関係について「日本が侵略しなかったと言ったことは一度もない」と明言した。過去の植民地支配と侵略を認めた村山富市首相談話に関しても継承する考えを示した。村山談話をそのまま踏襲しないなどとした従来の発言を軌道修正した。
  …
  首相は中国について「大きな被害、苦しみを与えたことに痛惜の念を持っている」と強調。朝鮮半島にも「大変な被害、苦しみを与え、痛惜の念、反省の上に立って今日の日本がある」と言及。村山談話には「過去の政権の姿勢を全体として受け継いでいく」。
     (
産経新聞 2013/5/15 13:48

 

  【「村山談話」について】
  歴代内閣の立場は引き継いでいる。安倍内閣として侵略や植民地支配を否定したことは一度もない。(参院予算委の首相答弁要旨)
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産経新聞 2014/3/4 10:27

  【「河野談話」について】
  菅氏は、政府が河野談話を継承する立場であることを説明し、桜田氏は「政府の立場は理解した」と答えた。その上で菅氏は「誤解を招くことがないようにくれぐれも留意してほしい」と求めたという。(「河野談話」見直し賛同の桜田文科副大臣に注意 菅長官「政府は継承の立場だ」)
     (
産経新聞 2014/3/4 11:02

  【「南京大虐殺」について】
  菅氏は1937(昭和12)年のいわゆる南京大虐殺について、「政府の基本的な立場は旧日本軍によって南京入場後、非戦闘員の殺害、または略奪行為があったことは否定できないというものだ。安倍政権も全く同じ見解だ」と述べた。(首相批判の米紙に抗議 菅長官「著しい誤認」)
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産経新聞 2014/3/4 21:21

 

  安倍晋三首相が14日、従軍慰安婦制度への旧日本軍の関与を認めて謝罪した1993年の河野洋平官房長官談話の見直しを初めて明確に否定した。慰安婦問題で誠意を示すよう求める韓国の朴槿恵大統領に対し、関係改善に向けたメッセージを送った形で、首相は、24日からオランダ・ハーグで開かれる核安全保障サミットに合わせた日米韓3カ国首脳会談の実現につなげたい考えだ。
  「金曜の集中審議を見てもらいたい」。政府関係者によると、外務省の斎木昭隆事務次官は12日、ソウルでの韓国外務省の趙太庸第1次官との会談でこう語り、14日の参院予算委員会では、首相から踏み込んだ発言があることを事前通告した。
  実際、首相は同日、河野談話について「安倍内閣で見直すことは考えていない」と明言。「官房長官が答えるのが適当」などとはぐらかしてきた従来の姿勢を転じた。元慰安婦に対しても「筆舌に尽くし難いつらい思いをされたことを思い、非常に心が痛む」と語り、気遣いを見せた。
     (
時事通信 2014/3/14 18:32

 

  安倍晋三首相は27日、オバマ米大統領が韓国で慰安婦問題について「甚だしい人権侵害」と言及したことに関し、「筆舌に尽くしがたい思いをした慰安婦の方々のことを思うと胸が痛む。21世紀はそうしたことが起こらない世紀にするため、日本も大きな貢献をしていきたい」と述べた。
  オバマ氏は、25日の米韓首脳会談後の共同会見で「未来を見ることが日本と韓国の人々の利益だ」と指摘し、韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領は日本に「誠意のある実践が必要だ」と早急な対応を要求した。首相はこれらを念頭に「今後とも日本の考え方や方針を説明していきたい」として、引き続き国際社会に理解を求める考えを強調した。
     (
産経新聞 2014/4/28 7:55

 

 このように(意外に思われるかもしれないが)、政権獲得後の首相としての安倍氏と内閣官房長官は一貫して、「村山談話」の「継承」を明言し、「河野談話」の「見直し」を否定しているのである。

 

  政府は24日の閣議で、慰安婦をめぐる平成5年の河野洋平官房長官談話や、過去の植民地支配を認めた7年の村山富市首相談話に、旧日本軍が慰安婦を強制連行したとする故吉田清治氏の証言は反映されていないとの答弁書を決定した。
  吉田忠智社民党党首の質問主意書に答えた。
     (
産経新聞 2014/10/24 12:05

 

  菅義偉官房長官は22日の記者会見で、河野洋平元官房長官が平成5年に慰安婦問題に関する談話の発表会見で強制連行を認める発言をしたことに関し「談話と河野氏の発言は区別したい」と述べ、談話を継承する政府方針は変わらないと強調した。同時に「戦争は女性の人権が侵害されてきた歴史だ。日本は人権侵害のない世界をつくりたいと戦後取り組んできている」と訴えた。
     (
産経新聞 2014/10/22 22:45

 

 ここでは、「村山談話」及び「河野談話」には「故吉田清治氏の証言は反映されていない」ことを明言すると共に、「河野談話」と、その発表会見上での河野氏による「強制連行を認める発言」を「区別」した上で、「談話を継承する政府方針は変わらない」ことが、安倍内閣の「政府方針」として「強調」されているわけである。この点については一般に大きく誤解されている(そもそも河野氏自身が理解していない)ようだが、実際の「河野談話」の文言では、慰安婦の募集時における軍の関与の間接性がその制度的特徴であることが強調されているのであり、慰安婦の軍による直接的・組織的な暴力的拉致(すなわち「強制連行」である)を、慰安婦制度に伴う一般的事実として認定しているわけではない(もちろん、個々の事例としての「強制連行」に相当する行為の存在を否定しているわけでもない―詳しくは「産経の捏造 1 (「河野談話」と「強制連行」)」を参照)のである。よく読んでみれば、「河野談話」には「見直し」の必要などなかったことに(この期に及んで)気付いたのであろう。

 

 〈最新発言〉

  米紙ワシントン・ポストは27日、安倍晋三首相のインタビューを掲載した。同紙によると、首相は、慰安婦が「人身売買(ヒューマン・トラフィッキング)の犠牲となり、筆舌に尽くしがたい痛みと苦しみを経験されたことを思うと、心が痛む」と述べたと報じた。インタビューの内容は英訳されており、日本語でどのような表現を使ったかは明らかではない。
  同紙電子版が伝えた詳報によると、首相は慰安婦問題により「女性の人権が侵害された」と指摘。「21世紀を人権侵害のない最初の世紀とすることを願っている」と述べた。
  また、日本の植民地支配と侵略を謝罪した戦後50年の「村山談話」、戦後60年の「小泉談話」を含め、「過去の政権の歴史認識に関する立場を、安倍内閣は守る」と発言した。慰安婦募集の強制性を認めた1993年の「河野談話」に関しては「見直しはしていない」と語った。
     (
産経新聞 2015/3/28 8:59

 

  安倍晋三首相は30日の衆院予算委員会で、米紙インタビューで慰安婦について「人身売買」という表現を使用したことをめぐり、「この問題についてはさまざまな議論がされてきているところだが、その中で人身売買についての議論も指摘されてきたのは事実だ。その観点から人身売買という言葉を使った」と述べた。
     (
産経新聞 2015/3/30 11:26

 

 安倍氏自身によって実際に「人身売買という言葉を使った」事実が明らかにされることにより、『産経新聞』による「インタビューの内容は英訳されており、日本語でどのような表現を使ったかは明らかではない」との留保が無用なものであったことが(『産経新聞』の期待に反して、ということになりそうであるが)明確になってしまったわけである。

 

 〈ワシントン・ポスト紙に掲載されたインタビューの詳細〉

  My opinion is that politicians should be humble in the face of history. And whenever history is a matter of debate, it should be left in the hands of historians and experts. First of all, I would like to state very clearly that the Abe cabinet upholds the position on the recognition of history of the previous administrations, in its entirety, including the Murayama Statement [apologizing in 1995 for the damage and suffering caused by Japan to its Asian neighbors] and the Koizumi Statement [in 2005, stating that Japan must never again take the path to war]. I have made this position very clearly, on many occasions, and we still uphold this position. Also we have made it very clear that the Abe cabinet is not reviewing the Kono Statement [in 1993, in which the Government of Japan extended its sincere apologies and remorse to all those who suffered as comfort women].
  On the question of comfort women, when my thought goes to these people, who have been victimized by human trafficking and gone through immeasurable pain and suffering beyond description, my heart aches. And on this point, my thought has not changed at all from previous prime ministers. Hitherto in history, many wars have been waged. In this context, women’s human rights were violated. My hope is that the 21st century will be the first century where there will be no violation of human rights, and to that end, Japan would like to do our outmost.
     (
Washingtonpost 2015/3/26 
http://www.washingtonpost.com/blogs/post-partisan/wp/2015/03/26/david-ignatiuss-full-interview-with-japanese-prime-minister-shinzo-abe/

 

 

《関連記事:米国務省次官とNHK会長の発言》

 

  米国務省は3日までに、シャーマン国務次官の日中韓の歴史認識問題に関する発言が、韓国で反発と波紋を呼んでいることを受け、韓国メディアなどに対し、慰安婦問題に絞った補足の見解を表明した。
  見解は、慰安婦を「性的な目的の女性の売買」と表現し、人身売買だとの認識を示した。また、過去の植民地支配などを謝罪した「村山談話」と、慰安婦募集の強制性を認めた「河野談話」が、「近隣諸国との関係を改善する重要な章になった」と強調した。
  シャーマン氏は2月、戦後70年をテーマにしたワシントンでの講演で、慰安婦問題などで日中韓の協力が妨げられているとの認識を示し、「理解できるが、もどかしい」と発言した。これに対し、韓国メディアは「関係回復の責任は(対立の)原因をつくった日本にある」(韓国日報)などと反発している。
  見解は、村山談話と河野談話に関する米政府の認識が韓国側と共通していることを示し、安倍政権に対して両談話を継承することが望ましいとの意向を示唆することで、韓国側の理解を求めたものとみられる。
     (
産経新聞 2015/3/4 21:58

 

  NHKの籾井勝人会長が、慰安婦問題で旧日本軍の関与を認めた1993年の河野洋平官房長官談話は「国の方針ではない」と発言した問題について16日、板野裕爾・NHK専務理事は発言の事実を認めた上で、「籾井会長は、河野談話が閣議決定されていないこともあり、政府方針として判断するのは難しいという思いで発言した。今は正式な方針と認識している」と述べた。衆院総務委員会理事懇談会で説明した。
  NHK関係者によると、籾井会長は今年1月9日の国際放送番組審議会で「安倍(晋三)首相が安倍談話を出せばこれは国の政策だが、河野談話はそうではない」と発言した。
     (
毎日新聞 2015/3/16 22:32

 

 

 

《まとめ》

 

 政権獲得前には、

  再び自民党が政権の座に就いた場合は「(教科書で周辺諸国への配慮を約束した)宮沢喜一官房長官談話、河野談話、(アジア諸国に心からのおわびを表明した)村山富市首相談話、全ての談話の見直しをする必要がある。新たな政府見解を出すべきだろう」との考えを明らかに

…していた安倍晋三氏は、政権獲得後は再三再四にわたり「村山談話」及び「河野談話」の「継承」を明言し、3月26日の『ワシントン・ポスト』紙のインタビューでは、あらためて、

  慰安婦が「人身売買(ヒューマン・トラフィッキング)の犠牲となり、筆舌に尽くしがたい痛みと苦しみを経験されたことを思うと、心が痛む

…と述べ、

  慰安婦問題により「女性の人権が侵害された」と指摘。「21世紀を人権侵害のない最初の世紀とすることを願っている」

…と述べると同時に、

  日本の植民地支配と侵略を謝罪した戦後50年の「村山談話」、戦後60年の「小泉談話」を含め、「過去の政権の歴史認識に関する立場を、安倍内閣は守る」と発言した。慰安婦募集の強制性を認めた1993年の「河野談話」に関しては「見直しはしていない」

…と明言したというわけである(「慰安婦問題」を考える際に慰安婦の調達法が「人身売買」に求められることの重大性については「産経の捏造 2 (櫻井よしこ氏と「人身売買」)」を、「河野談話」をどのように読むべきかについては「産経の捏造 3 (橋下徹氏と「河野談話」)」を参照)。

 

 今回のこれまでより踏み込んだ(追い詰められた?)発言内容は、シャーマン米国国務次官の発言(3月4日付産経新聞報道)に照応したもののように見えるが、まるで必要な文言を指定(むしろ「指導」と表現すべきか?)されたようにさえ見えてしまう(「人身売買」への新たな言及と、「村山談話」と「河野談話」の「継承」の再確認)ところが、日米関係の現状を評価する上でも、安倍氏支持層への心理的影響を考える上でも興味深いものとなっている。

 実際、今回の安倍氏の発言を通して、安倍氏の忠臣であるはずのNHK会長の間抜けぶりが際立ってしまったことにもなるわけで、ここで籾井氏の心中をお察ししてみることにも興味を感じるが、その点については私の想像力を超えているような気もしないでもない。

 

 

 

 

 

(オリジナルは、投稿日時 : 2015/03/30 18:59 → http://www.freeml.com/bl/316274/242552/

 

 

 

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