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2014年1月

2014年1月28日 (火)

『土徳流離』と神主の心意気

 

 御茶ノ水で丸ノ内線に乗り換えて「本郷三丁目」で下車。

 本郷通りの向かいに「東京大学仏教青年会」の入ったビルはあった。

 

 

 「宗教者災害支援連絡会(宗援連)」という団体の「第18回情報交換会」(2014年1月20日)に参加。今回の内容は、

 

 1. 南相馬の現状と被災者・避難者・子供の支援
   西 道典氏(男山八幡神社宮司、NPO法人南相馬こどものつばさ理事長)
 2. 震災・原発事故から見えてきた真宗移民文化―ドキュメンタリー映画『土徳流離』制作を通じて
   青原 さとし氏(ドキュメンタリー映像作家)
   「土徳流離・撮影報告」(38分)・「土徳と真宗移民」(12分)上映
 3. その他の報告・総合討議

 

…という構成。友人でもある青原監督の最新作(撮影中)にまつわる話が聞けるらしいというので出かけたわけである。

 

 

 『土徳流離』は、(今回上映された)その一部だけでも濃密に情報が詰まっている。これが長編ドキュメンタリー作品として完成されるのだと思うと、今から楽しみである(註を参照)。

 

 実際には、青原さんが先で西氏が後という順番になったのだが、少し遅れて到着した私にはそれも幸運であった(おかげで西氏の講演のすべてを聞くことが出来たのだから―『土徳流離』は完成を待てばよいのだし)。

 

 

 で、男山八幡神社の宮司(つまり神主さん)のお話。

 神主を務めると同時に、地元ロータリークラブでも活躍し、小中学校のPTAの会長をも務め(地域の「名士」である)、その上で「NPO法人南相馬こどものつばさ」理事長も務める西氏なのである。

 大自然災害(大地震に津波)があり大人災(原発事故)があり、南相馬の子供たちもまた厳しい状況におかれている。その子供たちをどのようにサポートするのか?

 これがいわゆる「反体制」を標榜する人々の集会であれば、政府・行政の対応を批判し、大企業の姿勢を糾弾し、悲憤慷慨していれば、つつがなく話は進む。しかし、ここは宗教関係者の集まりなのだ。行政批判・大企業批判とは異なる方向で、話は進行する。

 肩書を見ればわかるように、西氏は「反体制」の人ではない(どちらかといえば「体制」の人である)。しかし、被災者はサポートされなければならないし、被災・避難した子供たちもサポートされなければいけない。行政の回路が必要なのはもちろんであるが、しかし、行政の対応を批判していれば済む話でもないのである。語られるのは、西氏が(西氏も南相馬の人間であり被災者なのだが)、被災者・避難者・子供のサポート活動にどのように取り組んできたのか、という話である。

 で、ここで重要なのは、体制・反体制の二分法ではなく、西氏は自治を実践しているのだという点なのだと思う(「自治」ってのは自らが覚悟をもって「体制」となること。そんなことを実感させられたのであった)。

 その西氏の実践を支えているのもまた、青原作品のタイトルでもある「土徳」、その土地に生きることが生み出す関係性であり「力」なのだと思わされた。

 

 

 

【註】
 『土徳流離』(2015年2月完成予定)について、制作実行委員会北陸支部代表の太田浩史氏は以下のように記している。

支援映画『土徳流離』制作に向けてのお願い
     映画『土徳流離』制作実行委員会北陸支部代表 太田 浩史

 地震津波と原発災害にみまわれた福島県浜通り地方では、いまだ除染のメドがたたないばかりか、健康不安がささやかれる中、若者の減少で地域社会の存続すら危ぶまれています。そしてそんな将来に対する不安の中で、いまだ仮設住宅に暮らす人達の疲労は肉体的にも精神的にもピークに達している観があります。でも今日経済優先が叫ばれ、原発の再稼働はおろか、輸出まではじまろうとしている国家的風潮の中で、その人達の存在を私達はどれだけ感じ続けていられるのでしょうか。
 しかしながら忘れてならないのは、同地はたんに被災地のひとつであるばかりでなく、約二百年前から百五十年前にかけて日本史上でも希有な真宗移民が行なわれ、二宮尊徳の報徳仕法(相馬御仕法)と呼応してみごとに天明・天保の大飢饉による荒廃から復興した注目すべき土地であることです。その歴史経験に学ぶことは、今回の被災からの復興はもとより、日本全体の環境に優しい地域活性化にも大いに参考になるはずです。
 さいわいなことに広島市の記録映画監督青原さとし氏が自作「土徳-焼跡地に生かされて」の上映会のため浜通り地方を訪ね、被災された方々との交流が生まれたことがきっかけとなって、全国に発信し、後世に残るドキュメンタリー映画を作ろうという機運が盛り上がり、現地の市民によって制作実行委員会が結成されました。委員会には現地の報徳運動関係者や全真宗寺院住職と門徒代表も含まれています。原爆と原発という課題の共有を通して、広島の爆心地から八百メートルに位置する真宗寺院に生れた青原監督の創作姿勢と、原発被災地の土徳の見事なコラボレーションが実現したのです。

 一つには、福島県浜通り以外の人々が、震災と原発災害の問題意識を風化させず、より深化させていくため、
 一つには、福島県浜通りの人々が、先祖への尊敬と誇りを再認識し、それを今後の歩みの力としていただくため、

以上二つの目的のためにこの映画が企画されました。
 これを受けて移民を数多く出した北陸、山陰地方や、原爆が投下された広島・長崎においてまず協力の輪が広がり、全国に波及しつつあります。ぜひこの運動にご賛同、ご支援を賜りたく、謹んでお願い申し上げます。
 なお一般および特別の賛助金は、ご面倒ですが別紙要項に基づき、所定の口座にお振込みください。会計処理には万全を期し、御礼および領収の確認を葉書等でさせていただきます。
                    合掌

 

 

 

 

 

(オリジナルは、投稿日時 : 2014/01/20 22:53 → http://www.freeml.com/bl/316274/213205/

 

 

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2014年1月 3日 (金)

松林要樹監督の『祭の馬』(2013)を観た

 

 正月の二日目に(ウマ年の正月にふさわしく?)、渋谷のイメージ・フォーラムで上映中の松林要樹監督の『祭の馬』(2013)を観た。

 

 一言で云えば、馬の映画。二言では、南相馬の馬の映画。三言なら、東日本大震災後の南相馬の馬の映画。もう一言つけ加えれば、東日本大震災に伴う原発事故後の南相馬の馬の映画。もう一言を加えれば、東日本大震災に伴う原発事故後の南相馬の馬と人の映画、ということになるだろうか。

 

 

 冒頭の「相馬野馬追」の映像と、その背後に流れる音楽(しばらく聴いてから馬頭琴だ!と気づく←と書いてしまったのはいいが、監督当人によれば別の楽器らしい。いずれにしても冒頭の擦弦楽器の演奏は装飾音の付け方なんかにモンゴルの匂いがするし、その後に使用されているシルクロードの西の方の匂いのする音と併せて、空間の拡がりを感じてワクワクしていたのであった…と1月4日にあらためて追記)の組合せに、まずシビれてしまった。その後も、いくつかのシーンの背後に、中央アジア騎馬民族系の音楽が効果的に用いられている。

 それからアップになった時の馬の目(の形)! たまたま正月用に購入した数種の馬の張り子の目が、ひとつだけ人間の目のような形をしている(他は、黒丸だったり白丸の中に黒丸で目を表現していた)のがあって、なんか気にかかっていたのだが、実際の馬の目も人間のような形をしているのであった(人間の目に比べると、黒目の占める割合が大きいが)。そんな馬の目のアップの度に、互いの距離が縮まるような印象がもたらされる(要するに、グッとくるのである)。

 

 

 

 馬は徹頭徹尾、人間の都合の中を生きるのである。生きるしかない存在なのである。

 人間と、家畜としての動物の関係の究極の姿が、原発事故に翻弄される人間の後に従うしかない存在としての馬たちを通して、あらためて浮き彫りにされる。

 もちろん、原発事故も人間がもたらしたものだが、原発事故にまず翻弄されるのも人間なのである。

 馬が、原発事故について知ることはないし、つまり馬自身は原発事故に翻弄されるような存在ではない。しかし、人間の管理下で生きている以上、管理する人間が原発事故に翻弄されれば、馬の運命もまた翻弄されることになるのだ。

 

 馬を生かそうとする人間がいて、つまり原発事故があろうとも馬を生かそうとする人間がいて、しかし原発事故はその人間を翻弄し、馬の運命も翻弄されるのである。そんな馬の姿を記録した映画ということになるわけだが、松林監督は、カメラと馬の顔が接するくらいに寄り添うことによって、他人事ではないものとして馬の運命を描いていたように思える。

 馬の目は、世話をする人間に対する信頼と、人間の管理下で生きる者としての諦観と、自由への憧憬を同時に語る。もちろん、馬が何を考えているかは知る由もないが、松林監督の馬に密着したカメラが捉えたのは、そのように見える馬の瞳であり、観る者は「グッとくる」ことになる。

 

 

 

 

 

(オリジナルは、投稿日時 : 2014/01/02 23:40 http://www.freeml.com/bl/316274/212308/

 

 

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