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2013年5月 3日 (金)

『相馬看花』と『モバイルハウスのつくりかた』を観る

 

 今年もドキュメンタリー映画を集めた「メイシネマ祭」が、5月3日から5月5日まで、平井駅下車の「小松川区民館ホール」を会場として開催される。…というわけで、第一日目の朝から出かける。

 

 

 

  今年のプログラムは、

 

5月3日

11時00分から 
 松林要樹監督 『相馬看花 第一部 奪われた土地の記憶』 2011年 109分 

13時40分から
 長岡英子監督 『コマドリ姉妹がやって来る ヤア!ヤア!ヤア!』 2009年 71分

15時40分から
 本田孝秀監督 『モバイルハウスのつくりかた』 2011年 98分

18時00分から
 小池征人監督 『だんらんにっぽん 愛知・南医療生協の奇跡』 2012年 118分

5月4日

10時30分から
 香取直孝監督 『関さんの森 1.2.』 1. 2008年 70分 2. 2012年 58分

13時30分から
 伊東英明監督 『放射線を浴びたX年後』 2012年 83分

15時40分から
 青原さとし監督 『タケヤネの里』 2012年 112分

18時20分から
 岡村敦監督 『リオ フクシマ』 2012年 104分

5月5日

10時30分から
 三浦淳子監督 『さなぎ~学校に行きたくない~』 2012年 103分

13時00分から
 四ノ宮浩監督 『わすれないふくしま』 2013年 98分

15時20分から
 飯塚俊男監督 『プッチーニに挑む 岡村喬生のオペラ人生』 2012年 88分

17時30分から
 岩佐寿弥監督 『オロ Olo. The boy from Tibet』 2012年 108分

 

…という構成。

 

 

 

 本日は松林要樹監督の『相馬看花』と本田孝義監督の『モバイルハウスのつくりかた』の二作品を観た。

 

 

 

 松林監督は、娘の関係で言葉を交わしたことはあるが、作品に接するのは初めて。

 表題通り、2011年の3月11日からの南相馬の人々の姿を記録したドキュメンタリー作品だが、映像は、地震に揺れる経堂(世田谷区)のアパートの窓辺のサボテンから始まる。映像関係者として、まず何が起ころうが記録するという姿勢が伝わってくる。

 4月に入り、南相馬へ支援物資を運ぶという友人のトラックに同乗し、南相馬との縁が生まれる。トラックは南相馬のビジネスホテル前に到着し、その場にいた市会議員(女性)の田中さんの協力を得て、支援物資としての役割を果たしていくことになる。

 映像は、その田中さんと共に、南相馬の被災地の惨状(目に見えるのは津波被害であり、それだけでも言葉を失うほどのものだが、その背後では原発災害も進行中なのである)の中に入って行くことになる。

 奮闘する田中さん夫妻の姿、避難所で出会った末永さん夫妻の姿、被災現地にとどまる粂夫妻の姿を中心に、進行する原発災害の中で変化していくそれぞれの生活が丁寧に描かれる。

 ここではエピソードを書き連ねるよりは、パンフレット中にある松林監督の言葉を紹介しておきたい。

 

 結論がわかっていたら、映画つくっていないと思うんですよね。わからないから、現場に行って考えようっていう気持ちが強いんです。タイトルの『相馬看花』は、中国の故事「走馬看花」という言葉に由来しています。本来は、「物事の本質ではなく、うわべだけを見てまわり、理解をしていない」という意味になるんですね。でも、私がすごく尊敬している橋田信介さんというイラク取材中に亡くなったジャーナリストが、「走っている馬の上からでも、花という大事なものは見落とさない」と言って、大切なことを見落とさなかったことを肯定しても良いんじゃないかって仰っている。この言葉を肯定的に捉えようとされています。橋田さんはどんな現場にもすぐ駆けつけるんですね。走っている馬のように、すぐ現場にたどり着く。「現場に行って物事を考えよう」って、私は橋田さんの言葉から読み替えたんです。現場に行かずにインターネットで集めた情報を分析してツイッターやってるジャーナリストもいるけど、私は現場に行って、相馬で花を看ようって。人の生活だったり、「花」には色々な意味があると思うんですが、それらをきちんと捉えたいと思って。

 

 この言葉は、確かに『相馬看花』にふさわしい。甚大な津波災害に加えての原発災害の中の日々を生きるそれぞれに個性あふれる人々の日常の姿(そこでは「非常事態」が「日常」なのである)を、その日の(衝撃的な)話題の提供を任務とする一過性のジャーナリズムの視線ではなく、ドキュメンタリストとしての丁寧な目配りをもって、松林監督は「きちんと」記録しているのである。原発災害に巻き込まれるとはどういうことであるのかを、原発災害に巻き込まれてしまった南相馬の人々の日常の経験として、自らも南相馬の人々の日常の経験に巻き込まれながら、丁寧に記録しているのだ。花の姿をきちんと捉えるには、馬から下りなければならない、ということなのである。

 

 

 

 『モバイルハウスのつくりかた』の方は、「メイシネマ祭’13」のプログラムを見て、何だかわからないが面白いに違いないという直感を頼りに観ることにした作品なのだが、そんな我が「直感」は「大当たり」となった。

 

 主人公は「建築家」の坂口恭平さんである。

 彼の主宰するワークショップの光景から映像は始まる。指導役の老人(鈴木さん)と若者を中心とした参加者、そして坂口さん。

 廃材と思しき角材を組み合わせ、釘で接合する。枠組が出来、筋交いが渡され、壁と床には合板が用いられる。参加者が作業を進める要所要所で、指導役の鈴木さんの的確なアドバイスが加えられ、小屋は完成する。

 「災害時に役立つ0円ハウスのつくりかた」というワークショップであり、指導役の鈴木さんは、実は、「路上生活者」である。

 

 簡易な建築は、もちろん災害には弱い。が、しかし、再建も簡易に出来るのである。

 

 「建築家」としての坂口さんには、「建築に本来求められるのは居場所の確保ではないか?」とでもいうような発想がある。人間の巣としての建築、であろうか?

 その意味で現代日本の路上生活者たちは、その手本となるような住まいのアイディアの実践者なのである。彼らの生活は、現代にふさわしく、なんと電化までされているのだ(もちろんそれは盗電なんかではなく、自動車用のバッテリーの利用による蓄電、ソーラー発電システムの導入までが含まれる! ということは、あの震災時の計画停電の影響を受けることもなかったはずだ)。

 

 多摩川の河原で生活する船越さんの指導の下で展開されるモバイルハウス(移動式住居)の制作過程などを追いながら、さらに「家」ないし「住居」をめぐる思考と実践は深められていく…などと書くと理屈っぽくなってしまうが(それに映像作品のすべてを書いてしまってはいけないし)、坂口恭平という個性ある人物(建築家)と、それぞれの住居を確保する方法を身につけたこれまた個性ある路上・河川敷生活者(建築実践家)たちの姿に口を開けたまま、1時間半ちょっとの上映時間は過ぎてしまうのであった。

 

 

 

 

 

(オリジナルは、投稿日時 : 2013/05/03 21:47 → http://www.freeml.com/bl/316274/203036/

 

 

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