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2012年3月 4日 (日)

「放射能」とのお付き合いの仕方という問題

 

 東北大学の流体科学研究所の圓山重直先生は、昨年五月の前半に、

 

 

 原発は巨大で不気味な怪物で我々はこれを納めなければならないが、戦争や自然災害と異なり、相手は物理法則に基づいて反応する。また、原発は我々が作り出した物である。人間が相手の戦争や未知な現象が複雑に絡まる自然災害より制圧は容易なはずである。
 原発収束のためには、相手を知ることが一番重要である。原発で起きている現象は物理現象の結果なので、正確なデータと適度な洞察力があれば、かなりの確度で原発の現象が推定できるはずである。原発事故が収まってから、各種機関や学会で検討される「事故調査」では、全てデータが出そろい、現象も収束した段階で正確な分析が行なわれるはずである。最終的には、原子炉解体時あるいは封印時の事故調査で全てが明らかになるはずである。しかし、原発事故は今現在進行しており、現象が終わってから原因を明らかにしても遅きに失することになる。

 

 

…と書いた上で、福島第一原発の原子炉事故でのメルトダウンの可能性(蓋然性)について詳細に分析していた。

 東電がメルトダウンの可能性を認める発表をしたのはその数日後のことである。

 

 

 東電の発表については様々な批判があるわけだが、東電の責任として東電自身の解析結果としての「原子炉メルトダウン」を発表したということではある。その意味では必ずしも「隠蔽」があったわけではない。

 しかし、時間のかかる内部での解析結果を待つのではなく、原子炉の状況に関する生データを公開し、東電の外部の専門家による解析を求めることもすべきであったのであり、その意味での情報公開不足は否めない。圓山先生の論文(当人は「推理小説」と位置付けているが)でも、その点が指摘されているように、東電の情報公開不足が事故への適切な対処の機会を奪った可能性は否定出来ないのである。

 

 圓山先生は、

  戦争や自然災害と異なり、相手は物理法則に基づいて反応する。
  また、原発は我々が作り出した物である。
  人間が相手の戦争や未知な現象が複雑に絡まる自然災害より制圧は容易なはずである。

…と書いていたわけだが、「物理法則に基づいて反応する」のではない人間社会(ここでは東電本社の存在がクローズアップされる)の問題が、今回の原発事故では確かにマイナス要因として大きく作用していたことは否めない。

 

 

 

 原発事故の結果、我々が曝されることになった放射線をめぐる問題もまた、

  戦争や自然災害と異なり、相手は物理法則に基づいて反応する。
  また、原発は我々が作り出した物である。
  人間が相手の戦争や未知な現象が複雑に絡まる自然災害より制圧は容易なはずである。

…として要約可能な種類の事態であるはずである。

 正確なデータを取得し、適切な対処を怠らなければ、放射線障害がもたらす危険は、かなりの部分が回避可能なものなのである。

 その意味で、行政の対応には不十分なところはあった。行政もまた「物理法則に基づいて反応する」ような単純な性格の存在ではなく、人間社会という厄介なものの構成物なのである。

 

 放射線をめぐり、問題をもうひとつ厄介にしてしまっているのは、その危険さを過度に煽ることで自身の安心を確保している種類の人々をも生み出してしまう人間社会というものの存在である。そこにあるのは人間の心理の厄介さであり、それが除染等の行政施策の実施に際して適切な優先順位や予算配分の確定にマイナスに作用することになるし、いわゆる風評被害の発生源ともなってしまうのである。

 

 

 今日は、そんな状況に危惧の念を抱いている人々と顔を合わせ、忌憚なく話をする機会を得た。

 企画したのはウチのパートナーで、私以外の六人は全員女性であった(私は、後ろに控えてもっぱら聞き役として過ごしていた)。集ったのはウチのパートナーがネットで知り合った人々で、初対面であっても同じ危機感を共有しているからか、話はぐいぐいと進んでいく。

 

 物理現象としての放射線を適度に怖がることが必要なのはもちろんなのだが、過度に不安を煽らずに適切に対処することはいかに可能であるのか?

 

 話題の中心となったのは、そのような問題意識であったが、彼女らのやり取りを後ろで聞いていることは、私の人間社会への信頼感の回復に、少しは役に立ったように思われる。

 

 

 

 

 

(オリジナルは、投稿日時 : 2012/03/03 23:43 → http://www.freeml.com/bl/316274/183786/

 

 

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