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2010年6月26日 (土)

海兵隊と桃太郎(桃太郎 海の神兵)

 

 そもそもは、ウェストサイズの増加というプライベートな問題から始まったのであった。

 

 ウェストサイズ増加という、現実に進行中の事態を前に、宝船の要員的なスタイル(大黒さんとか、恵比寿さんとか、布袋さんとか…)への変化として考えることで、つまり「肥満」あるいは「デブ」と考えるのではなく、「貫禄」の増大として考えることで、脂肪の付着はプラスの価値として評価可能になる、ような気がしたわけだ。いわゆるポジティブ・シンキングってヤツであろうか?

 

…という自己欺瞞のための試みが出発点であった。いや、自己欺瞞ではなく、価値の転倒の試みであった、と言ってしまおう。

 

 

 

 アメリカン・ヒーロー的逆三角形型マッチョ・ボディを理想化するのではなく、宝船要員的紡錘体型タルミ・ボディを理想化することで、肥満のマイナスイメージは払拭される、はずだ。

 

…なぁんて、要するに、出発点は酒飲みのタワゴトに近い場所にあった。

 

 

 その上で、あらためてジャパニーズ・アニメ・ヒーローの体型を考えた時に、アメリカン・ヒーロー的、スーパーマン的マッチョ体型は、日本では、あまり人気のないことに気付いた。

 アメリカン・ヒーロー的体型とは、まさに米海兵隊員の姿でもある。

 

…というようなことを考え始めたわけである。

 

 

 鉄人28号の相撲取り体型は別格としても、鉄腕アトム的ポッチャリ体型に、ジャパニーズ・ヒーローの原点を見出せるような気にさえなって来たのであった。あるいは、ガンダムでもエヴァンゲリオンでも、ロボットはマッチョ・ボディだが、パイロットは海兵隊員系の逆三角形キャラクターではない。

 

…で、つまるところ、ジャパニーズ・ヒーローの原点は(ポッチャリ系の)桃太郎なんじゃないか、なんて方向へと、タワゴトは展開していったわけだ。

 

 

 桃太郎も、絵本などで見る限り、海兵隊員系のマッチョボディの持ち主には見えない。やはり、人間の理想形(この場合は強い男の理想的イメージ)が、日米では根本的に異なるのだろう。

 ところで、海兵隊員は、敵地に上陸し暴れまわるのが役どころだが、その意味では、桃太郎はジャパニーズ海兵隊員キャラではある。鬼が島に上陸し、暴れまわり、略奪に励むのが、桃太郎の姿であった。

 

 

 

 鬼が島の鬼が一体何をしたのかは、正直なところ、よく知らなかったりする。桃太郎登場以前の桃太郎側は、何か具体的に、鬼の被害に遭っていたのだろうか? まさか、ありもしない大量破壊兵器に因縁をつけられて…なんてことはないんだろうが、事実(絵本ではどうなっていたか、ってことだが)がどうだったのかはよくわからない。猿だの雉だの犬だのは、桃太郎に買収されて侵略のお手伝いをする有志連合の多国籍軍を連想させるが、まぁ、邪推であることを祈る。

 いずれにしても、敵地に上陸して強襲、制圧して略奪…という桃太郎こそは海兵隊の鏡に思えてくるのであった。

 一方で、桃太郎に随伴する雉こそは現代戦の航空攻撃を予言する存在ではないか、という卓説(?)まで登場する。そして、実際、当の米海兵隊は、独自の航空戦力を保有しているのである。

 

 要するに、絵本の桃太郎の話こそは、現代の米海兵隊の姿を予言するものなのであった。

 

…というところまで話は暴走していった(もちろん、あくまでも、酒飲みのタワゴト程度の話で、厳密な検証など求めてはいけない)。

 

 

 

 

 

 が、しかし、事態は思わぬ展開をするのだ。

 昭和十九(1944)年十二月制作、翌二十年の四月公開のアニメ、『桃太郎 海の神兵』の存在が、私たちの前に浮上するのであった。

 

桃太郎 海の神兵 1/9   (8:48)
 → http://www.youtube.com/watch?v=suRt7Dtdsmg
桃太郎 海の神兵 2/9   (8:15)
 → http://www.youtube.com/watch?v=1htQi-_VWRM&NR=1
桃太郎 海の神兵 3/9   (7:34)
 → http://www.youtube.com/watch?v=sKgXcAOenc4&feature=related
桃太郎 海の神兵 4/9   (7:30)
 → http://www.youtube.com/watch?v=A_IUs7GWIIU&NR=1
桃太郎 海の神兵 5/9   (6:23)
 → http://www.youtube.com/watch?v=nzzctRDcfXE&NR=1
桃太郎 海の神兵 6/9   (8:34)
 → http://www.youtube.com/watch?v=WbI2sokajZ0&NR=1
桃太郎 海の神兵 7/9   (7:39)
 → http://www.youtube.com/watch?v=t6N1oz_jD5w&NR=1
桃太郎 海の神兵 8/9   (8:50)
 → http://www.youtube.com/watch?v=6pZV_coeBSc&NR=1
桃太郎 海の神兵 9/9   (9:56)
 → http://www.youtube.com/watch?v=xAeK-UAuyUQ&NR=1

 

 敗戦(ポツダム宣言受諾)まで数ヶ月の時点、帝都東京も焦土に化した中での公開だったということになる。

 動画には「桃太郎 海の神兵  momotaro's divine sea warriors 」というキャプションが付けられているが、この「海の神兵」では、桃太郎は海軍陸戦隊所属の落下傘降下部隊(空挺部隊)の指揮官として活躍するのだ。

 『桃太郎 海の神兵』は、海から「敵地に上陸して強襲、制圧」するのではなくて、空から「敵地に降下して強襲、制圧」する海軍陸戦隊の活躍を描いた、大日本帝國の戦中アニメなのであった。

 

 

 『ウィキペディア』の「九六式陸上攻撃機」の項に、

 
なお、「空の神兵」として国民に広く知られる事となる日本海軍空挺部隊を運搬したのも、九六式陸攻の輸送機版である九六式陸上輸送機である。1942年(昭和17年)1月11日にセレベス島のメナドに二波408人を降下させたのは延べ45機、2月20日に西ティモールのクパンへ二次に渡り700人を降下させたのは28機の九六式輸送機であった。

 
…という記述があるが、この「1942年(昭和17年)1月11日にセレベス島のメナドに二波408人を降下させた」作戦が、このアニメの下敷きとなっているわけである(アニメ冒頭でも、そのことが説明されている)。

 「大東亜戦争」の緒戦段階での日本軍の「赫々たる戦果」の記憶を基に、そこに桃太郎伝承を合体させ作成されたストーリーというわけだ。

 しかし、アニメ公開時には、「赫々たる戦果」は既に「記憶」の中にしか存在せず、映画館のある都市ではB29による空襲が日常化していたのであった。

 
 

 

 アニメの冒頭(1/9~2/9)では、凱旋した雉や猿の故郷での牧歌的なシーンが延々と続くが、「桃太郎 海の神兵 3/9」でやっと、南方に設営された飛行場への、件の「九六式陸上輸送機」と零式戦闘機の着陸シーンが登場する。九六式の特徴的な双尾翼には、「桃」の部隊マーク(これもノーズアートの一種だ)が描かれているところが面白い。
 「4/9」に至って、海軍落下傘降下部隊指揮官としての桃太郎が姿を見せる。米海兵隊員型マッチョボディというよりは、ポッチャリ系のイメージである(表情はキリッとしているが)。
 「5/9」では、現地の動物たちへの日本語教育シーンがある。日本軍による占領の一側面のアニメ的表現と言えるだろうか。「6/9」では出撃準備が進む中での慰問袋到着シーンが、冒頭の故郷の牧歌的シーンと重ねられる。また、ここでは九九式艦上爆撃機が登場し、偵察任務を帯びて離陸する姿を見せる(後に搭乗員の一人は戦死する)。
 「7/9」でいよいよ出撃、と思わせるが、ここでは、ゴア王国が白人に植民地化される過程と伝説上の解放者の存在が語られ、その解放者のイメージは(言うまでもないだろうが)桃太郎に重ね合わせられる。
 「8/9」でいよいよホントに出撃。悪天候の中を飛び続ける九六式が、雲中で機体に浸水(雨漏り)するシーンがあるが、これが検閲で問題とはならなかったことは興味深い。
 「9/9」でついに降下し、着剣戦闘が始まる。投下された野砲、重機関銃そして手榴弾を用いての攻撃。相手は英軍のようだ。指揮官桃太郎対パーシバル風の鬼の司令官の降伏交渉シーンがあったりする。

…と、そんな展開の、大作(ただしモノクロ)アニメである。

 

 

 

 まぁ、同時期のアメリカでは、カラーの娯楽アニメ作品が制作上映されていたわけで、そこに日米間の厳然たる国力の差が現れているわけだが、日本でもアニメは戦争と無縁ではなく、しかも桃太郎が海軍陸戦隊(海兵隊に相当する日本海軍の組織である)空挺部隊長として戦争とは無縁ではなかったというエピソードが、こうして残されていたわけである。

 
 

 

 

 

【桃太郎 海の神兵】
 → http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A1%83%E5%A4%AA%E9%83%8E_%E6%B5%B7%E3%81%AE%E7%A5%9E%E5%85%B5

【海軍陸戦隊】
 → http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%B7%E8%BB%8D%E9%99%B8%E6%88%A6%E9%9A%8A

【日本海軍空挺部隊】
 → http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E6%B5%B7%E8%BB%8D%E7%A9%BA%E6%8C%BA%E9%83%A8%E9%9A%8A

【九六式陸上攻撃機】
 → http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B9%9D%E5%85%AD%E5%BC%8F%E9%99%B8%E4%B8%8A%E6%94%BB%E6%92%83%E6%A9%9F

【蘭印作戦】
 → http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%98%AD%E5%8D%B0%E4%BD%9C%E6%88%A6

 

 

 

 

 

 

 

(オリジナルは、投稿日時 : 2010/06/24 22:45 → http://www.freeml.com/bl/316274/141226/

 

 

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