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2010年1月 6日 (水)

スバラシイ英国の監視社会の危機を救う日本の企業の姿

 

 複数のMLに参加しているわけだけれど、お遊び関係以外は、近現代史関係だったり、哲学(?)関係だったり、その他も情報獲得か議論が中心の「お堅い」ものが多い。

 自由に参加可能というネット上のMLという場には、当然のことながら様々な人間が参加しているわけで、投稿内容・議論内容も玉石混交となるのは止むを得ないことではある。

 

 

 アラシ系にはそれなりの対処の仕方があるけれど、当人がマジメな参加者として投稿を続けている(つもり)にもかかわらず、表明されるご意見は愚論ばかりという手合いには困るしかない。

 事実関係をあくまでも実証的に論じるか、あるいは問題をどこまで論理的に分析出来るかというスキルが、「お堅い」系のML投稿者には問われるのだと思うが、実証的な事実の提示への努力に配慮せず、論理水準の維持にも無関心に、ただただ「お気持ち」をのみ書き連ねたような「感想文」レベルの投稿を続けるタイプにはうんざりさせられるものだ。

 

 

 

 まぁ、今日もそんな投稿を読まさせられてウンザリしていたわけである。

 

 

 

 日本社会への悪口と英国社会の賛美のセットがお得意な人物が、相変わらずのつまらん話を続けていたわけだ。

 

 旭川の街角に林立する(らしい)警官の人形への文句やら、多過ぎる信号機への文句が書き連ねてあり、それに対し英国では…というお話の構成。警官の人形が不必要であることには同意するし、無駄な信号機に悩まされることも事実ではある。

 しかし、戦争体験の継承を目的としたML上でそんな話を聞かされても迷惑でしかない。実に退屈な話だ。

 

 まぁ、確かに英国はすばらしいよなぁ、先進的な監視社会だもんな、なんて思いながら読んでいたわけ。

 

 で、退屈しのぎに「英国 監視システム」で検索してみたら…

…なかなかに面白い話が出て来るのであった。

 

 

 

 

 「WIRED VISION」というサイトの、Charlie Sorrel 氏による「「全車両の移動を検索可能」:英国や日本の監視カメラ(動画)」(2009年5月28日)という記事から始めよう。
 (→ http://wiredvision.jp/news/200905/2009052821.html

 記事によれば、

 英国警察は、巨大な監視作戦を開始しようとしている。これに比べれば、[ジョージ・オーウェルの小説]『1984年』に登場する、[市民の行動を監視する双方向テレビ]「テレスクリーン」など、近所の店の監視カメラと同じくらい役立たずで善良に思える。

 英国の監視カメラのネットワークには、[街角に設置されたもののほかに、車両向けとして、]1日当たりおよそ1000万枚のナンバープレートを読み取れる『自動ナンバープレート認識』(ANPR)の大量のカメラも含まれる。読み取られたナンバープレートはすぐに中央コンピューターに送信・蓄積され、全国で共有される。[英語版Wikipediaによると、データは5年間に渡って保存。今後は1日あたり1億件のデータを処理できるようにする計画]

という話である。更に、

 このネットワークには、簡単なソフトウェアのアップグレードで、ほとんどすべての「それなりの機能を備えた」カメラを追加できるという。つまり、その数の多さで有名な英国の監視カメラをネットワーク化して、ナンバープレートのデータベースと統合できるのだ。[ロンドンに設置された監視カメラ総数は50万台、英国全体では420万台と推定されている]

 理論的には、全国のすべての車が追跡される可能性がある。あちこちにある監視ネットワークで居所が追跡されるだけでなく、ナンバープレートを検索エンジンに入力するだけで居所がわかるようになる世界だ。

というシステムが構築可能なわけだ。

 その420万台という監視カメラ数は、「WIRED VISION」の別の記事によれば、

 BBCの記事によると、英国では420万台の監視カメラが設置されており、これは14人に1台という割合

という計算になるらしい。
 (→ http://wiredvision.jp/news/200809/2008090221.html

 

 

 何ともスバラシイ監視社会ぶりである。さすがに英国はオーウェルの故国であった。

 

 

 

…なんて感嘆していたわけであるが、検索を続けると更に驚愕の実態が…

 

 

 ご紹介するのは、「CNET Japan」というサイトにある、「「データが膨大で手が回らない」--監視カメラ大国の英国で警察が悲鳴」(2009/05/18 17:19)という Tom Espiner氏の記事である。
 (→ http://japan.cnet.com/news/sec/story/0,2000056024,20393264,00.htm

 同記事によれば、

 英国警察長協会(Association of Chief Police Officers:ACPO)によると、警察は監視カメラが日々生成する大量の情報に手が回らなくなっているという。

 ACPOの犯罪記録局で情報ディレクターを務めるIan Readhead氏は先週、警察は監視カメラからの大量のデータに圧倒されており、警察が監視カメラの1機能である「Automatic Number Plate Recognition System(自動ナンバープレート認識システム)」を使ってリアルタイムで車を追跡できなくなっていることは大きな懸念の1つであると述べた。

というのである。記事は、

 保守党の「影の内閣」で内務相を務めるDominic Grieve氏は、犯罪対策ツールとしての監視カメラの効力は明確ではなく、警察による監視カメラの利用はリソース不足が障害となっていると述べている。

という言葉で結ばれているのであった。

 情報は解析されなければ意味を成さない。あまりに大量の情報に対し、解析作業が追いつかなくなっているというのである。取得された情報が何も生み出さない状況が出現してしまっているわけだ。

 実に皮肉な話である。

 

 

 

 しかし、話はまだ続く。

 

 ブログ「目黒川の畔にて」にある「英国監視カメラ(CCTV)社会の実際」(June 26, 2008)という記事を読もう。
 (→ http://tokyo-nagano.txt-nifty.com/smutai/2008/06/cctv_c5c2.html

 記事は、

 英国では、CCTVという言葉が一般に通用する用語として定着しています。世界に4千万台設置されているとされているCCTVの実に10分の1とも言われる台数が英国に設置されているとも言われています。

 CCTVはClosed-circuit television(有線テレビ)の略称であり、防犯用・監視用に幅広く使われています。英国セコム社長の竹澤稔氏は、1日ロンドンを歩くと、300回くらいはCCTVに撮影されていることになるとおっしゃっておられます。

という解説から始まる。ここでは、英国に設置されている監視カメラの国民14人に1台という台数が、世界中の監視カメラ台数の10分の1が英国に存在するという事実として示されているわけだ。しかし、先の「CNET Japan」の記事同様に、

 最近行われたセキュリティ対策(安全対策)に関する会合で、警察幹部が、CCTV カメラの犯罪抑止効果を否定する発言を行い、物議を醸しています。

 2008 年4 月にロンドン市内で行われたウェブサイト「セキュリティ・ドキュメント・ワールド」12の主催する会合で、ロンドン警視庁の「視覚映像・身元識別・検出局(Visual Images,Identifications and Detections Office; Viido)」の局長であるミック・ネビルし捜査部長が、「CCTV カメラでは、裁判で容疑者を有罪に持ち込むのに十分なほど質の良い映像を撮ることができず、その結果として、犯罪抑止効果をもたらすことにも成功していない。英国におけるCCTV カメラの利用は、膨大な資金の無駄遣いとなっている」との発言を行っています。

という現状を紹介している。

 同記事には、「CCTV カメラの映像の監視を行う警察職員は、より多くの訓練が必要とされており」、「CCTV カメラの映像監視は、退屈な仕事であるとして回避されがちである」というロンドン警視庁捜査部長の言葉も載せられている。確かにウンザリさせられる仕事に違いない。

 

 もっとも、うがった見方をすれば、監視社会化への懸念を逸らすための警察当局者の発言と解釈することも出来そうではある。

 

 しかし、そんな英国への救いの手は、既に差し延べられているのである。「監視カメラ大国の英国で警察が悲鳴」という事態への救いの手は、なんと、日本から差し延べられていたのであった。筆者は続ける。

 さて、一般的にはCCTVの設置台数が異常に多い割には、その機能自体に対しては疑問の声も出ている英国ではありますが、CCTVを実際のサービス向上に生かしている日本の企業が英国にはあります。セコムPLCという英国セコムです。

どういうことかというと、

 このように、英国の警備会社は防犯装置の販売のみを行なうのみであり、後は警察にお任せ、というのが基本であるに対し、セコムは、CCTVでの監視に加え、防犯装置が作動した場合、オーナーへの連絡や、警察の初動対応の下準備のため鍵を持参し現場へ駆けつけるなど、ソフトの防犯サービスを提供していることで競争力をつけてきたようです。 防犯装置の販売だけでなく防犯サービスそのものを提供するというセコム方式は、韓国や台湾等のアジアにおいても取り入れられてきましたが、英国においても、警報器が鳴った際の初動対応は警察が行なうとされてはいるものの、実際には、上述のように警察の対応にも制限があったり、警察の十分な対応は期待できないため、セコム方式の防犯サービスの提供は英国マーケットにおいても歓迎されているということです。

というお話なのである。予想もつかぬ展開であった。

 

 

 

 セコムの活躍とは別次元で、監視カメラ映像の解析プログラムの開発という解析システムの自動化という方向も追求されてはいるわけなので、この問題、まだまだ今後の展開には予断を許さぬところがあるようではある。

 たとえば顔面による個人識別認証システムの開発とか…
 (顔認証システム → http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A1%94%E8%AA%8D%E8%AD%98%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0
 既に最近では、顔認証システムがコンパクトカメラに組み込まれていたりする事例もある。画角内にある既に登録設定された顔をカメラが認識し、撮影時のピントや露出が自動設定されるらしい。

 

 

 

…とまで話が発展してしまったことを思えば、退屈極まりないMLの投稿を読まさせられたのも必ずしも無駄ではなかった、ということであろうか?

 

 

 

 

(オリジナルは、投稿日時 : 2010/01/05 23:51 → http://www.freeml.com/ep.umzx/grid/Blog/node/BlogEntryFront/blog_id/126816/user_id/316274

 

 

 

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