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2009年9月29日 (火)

日本国の象徴と、國體の本義 3

 

 

  天皇は、日本國の象徴であり日本國民統合の象徴であつて、この地位は、主權の存する日本國民の總意に基く。

 

 「主権の存する国民」という文言を用いて、日本国の主権者が「国民」であることを、その第一章第一条で「日本国憲法」は表明している。

 
 

 「大日本帝國憲法」では、その第一章第一条において、

  大日本帝國ハ萬世一系ノ天皇之ヲ統治ス

…と、大日本帝國の統治者としての天皇の地位が言明され、第三条では「神聖ニシテ侵スヘカラス」とその地位の不可侵性が宣言されている。
不可侵の統治者の地位にある天皇は、政治的には、

  天皇ハ國ノ元首ニシテ統治權ヲ總攬シ此ノ憲法ノ條規ニ依リ之ヲ行フ

…国の元首であり、軍事的には、

  天皇ハ陸海軍ヲ統帥ス

…と規定された大元帥であった。

 「国民主権」への変化は、天皇を、そのような政治的軍事的大権を行使する統治者の地位から引き離してしまうことになる。

 新たに提示されたのは、

  日本國の象徴であり日本國民統合の象徴

…という「地位」であった。

 
 その意味するところは、

  天皇は、この憲法の定める國事に關する行爲のみを行ひ、國政に關する權能を有しない。

…ということになる。「国政に関する権能を有しない」とは、つまり、政治過程に関与する存在ではないということだ。天皇は統治者ではありえない。

 
 
 

 もっとも、戦後に行われた昭和天皇自身の説明によれば、昭和天皇は「大日本帝國憲法」下においても「立憲君主」として振舞っていた(振舞うために努力していた)のであって、「政治過程に関与」することのない存在であった(あろうとしていた)ということになっている(後註参照)。

 その言葉通りだとすれば、「日本国憲法」の規定は、「立憲君主」であることを希求して来た昭和天皇の意思に合致したものと考えられるだろう。

 
 

 「日本国憲法」下の天皇は、

  國會の指名に基いて、内閣總理大臣を任命(し)
  内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する

…のであり、その上で、「内閣の助言と承認により、國民のために」、

一 憲法改正、法律、政令及び條約を公布すること。
二 國會を召集すること。
三 衆議院を解散すること。
四 國會議員の總選擧の施行を公示すること。
五 國務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免竝びに全權委任状及び大使及び公使の信任状を認證すること。
六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復權を認證すること。
七 榮典を授與すること。
八 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認證すること。
九 外國の大使及び公使を接受すること。
十 儀式を行ふこと。

…を、「国事行為」として行うのである。

 

 それが「象徴」としての天皇の地位に求められる内実ということになる。

 
 
 

 その変化は、当時の幣原内閣の閣僚に代表される、戦前からの政治家・官僚達には受け入れ難いものと考えられた。

 しかし、「立憲君主」の権能としては、「象徴」に期待されている「國事に關する行爲」は妥当なものであろう。ここで明らかになることは、「大日本帝國憲法」の下で戦争を生き抜いた保守政治家にとっての天皇の地位は、「立憲君主」以上の存在、政治権力に大きく関与すべき存在であった、ということになる。

 

 もっとも、敗戦という条件の下では、占領軍の意向を相手にした保守政治家には、提示された「日本国憲法」の条文を受け入れる以外の選択肢はなかったのであるが。

 
 
 

 しかし、やがて、政治的軍事的大権の保有者としての天皇への復帰が、戦後の保守政治家による改憲論議の一つの焦点として浮上することになる。

 

 
 
 

 

(註) ここでは、立憲君主が「君臨すれども統治せず」的概念の下に、つまり君臨しても統治しない存在(政治過程に関与することのない存在)として取扱われてしまっているが、国法学的には、君臨し統治する立憲君主も存在する。
 憲法に、統治権の主体が君主であることが明記されていれば、実際に統治行為を行う(政治過程に関与する)かどうかとには関係なく、そこに「立憲君主」の存在は見出されるのである。
(詳細は以下の記事を参照願いたい―2011年1月6日記)
 日本国の象徴と、國體の本義 13(「立憲政治」と天皇)
  → http://uma-sica.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/post-3d4d.html
 日本国の象徴と、國體の本義 14(君臨し統治する天皇)
  → http://uma-sica.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/post-156d.html

 

 

 

 
 
 
 

(オリジナルは、投稿日時 : 2009/05/28 23:11 → http://www.freeml.com/ep.umzx/grid/Blog/node/BlogEntryFront/user_id/316274/blog_id/105492

 

 

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