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2009年8月28日 (金)

日本国の象徴と、國體の本義 2

 

 「天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス」(大日本帝國憲法)と、「この地位は、主權の存する日本國民の總意に基く」(日本国憲法)には大きな断絶があるわけだが、その核心は、「大日本帝國憲法」では「大日本帝國ハ萬世一系ノ天皇之ヲ統治ス」という形式で、天皇自身の出自自体が天皇であることを保障しているという点にあるだろう。

 それに対し、「日本国憲法」では、天皇が天皇であること(天皇の地位)は、「国民の総意」という外部の承認に依存していることになる。

 

 もちろん「日本国憲法」においても、

  皇位は、世襲のものであつて、國會の議決した皇室典範の定めるところにより、これを繼承する。

…と規定されており、その出自を抜きに、天皇の地位を語ることは出来ない。

 しかし、出自自体が無条件に天皇であることを保障してしまう「大日本帝國憲法」に対し、「日本国憲法」では「国民の総意」という条件の上に天皇の地位が成立するのである。
 
 もちろん、「大日本帝國憲法」においても、

  皇位ハ皇室典範ノ定ムル所ニ依リ皇男子孫之ヲ繼承ス

…となっている。

 しかし、「日本国憲法」では「皇室典範」もまた「国会の議決」という条件の下にあるのに対し、「大日本帝國憲法」における「皇室典範」には議会は容喙出来ないのである。

 

 つまり、天皇の地位、そして皇室の存在について、議会の承認を前提とする「日本国憲法」と、議会から独立した存在として規定する「大日本帝國憲法」には大きな断絶があると言わざるを得ない。

 

 とは言え、「日本國民の總意に基く」という条件がフィクションであることも確かなわけである。「国民の総意」が検証の対象になったことはないのだから。

 しかし、組織的な異議の提出もされていないわけで、「日本國民の總意に基く」という条件は否定されていないと言うことも出来るだろう。

 特に、「この地位は、主權の存する日本國民の總意に基く」という文言が、「第一章 天皇」の「第一條」の条文のものであるところに、「日本国憲法」起草者の苦心の跡を見るべきかも知れない。「国民主権」という「日本国憲法」の精神(何よりその点で「大日本帝國憲法」と異なるはずなのだが)は、天皇の地位に関する条文の中に埋め込まれているのである(「前文」には「国民主権」であることが記されてはいるが)。

 

  天皇ハ國ノ元首ニシテ統治權ヲ總攬シ此ノ憲法ノ條規ニ依リ之ヲ行フ

  天皇ハ陸海軍ヲ統帥ス

…という、政治的軍事的な「大権」の保有者としての「大日本帝國憲法」下での天皇像から、「主權の存する日本國民の總意に基」き「國會の議決した皇室典範の定めるところにより、これを繼承する」天皇像への劇的な変化が、皇位の世襲という条件だけはそのままに、果たされているわけだ。

 
 
 

 それが占領軍主導の下で行われたのが、敗戦という事態のひとつの帰結であった。

 そのために、占領軍による「押し付け憲法」という評価も生まれるわけだが、「国民主権」と天皇の地位については、1945年末の「憲法研究会」による「憲法草案要綱」に現憲法条文の起源を見出すことが、憲法研究者の間では常識となりつつある。

 高野岩三郎、馬場恒吾、杉本孝次郎、森戸辰男、岩渕辰雄、室伏高信、鈴木安蔵をメンバーとする「憲法研究会」による「憲法草案要綱」では、

根本原則 (統治権)

一、 日本国ノ統治権ハ日本国民ヨリ発ス
一、 天皇ハ国政ヲ親カラセス一切ノ最高責任者ハ内閣トス
一、 天皇ハ国民ノ委任ニヨリ専ラ国家的儀礼ヲ司ル
一、 天皇ノ即位ハ議会ノ承認ヲ経ルモノトス
一、 摂政ヲ置クハ議会ノ議決ニヨル

…とされており、GHQ民政局からの高い評価を受けていたことが明らかとなっているのである。

 
 
 

 

 
 
 

(オリジナルは、投稿日時 : 2009/05/27 22:13 → http://www.freeml.com/ep.umzx/grid/Blog/node/BlogEntryFront/user_id/316274/blog_id/105396

 

 

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