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2009年5月 4日 (月)

映画『靖国』を観る

 

 映画『靖国』(2007年 李纓監督作品)を観て来た。

 

 「反日映画」であるとして、昨年春の一般上映が妨害されたことは、まだ昔話ではないだろう。

 

 その『靖国』が、「メイシネマ祭 ’09」の上映作品のトップを飾ったのだった。

 で、朝から小岩まで出かけて、「反日映画」という評判の作品を、じっくり観て来た、というわけだ。

  

(写真は、小岩駅前で出会ったチンドン屋さん、「メイシネマ祭り」会場の小岩コミュニティーホール、上映作品のポスター)

 

 

 

 この映画『靖国』、「反日映画」としては不合格、ですね。

 

 つまり、そのまま何も編集に手を加えずに、ナレーションを少し加えれば、靖国神社の宣伝映画として通用してしまうだろう、というのが私の判定。

 現状では、制作側の誘導的ナレーションは存在せず、2005年8月15日の靖国神社境内のドキュメントと、現役の最後の靖国刀の刀鍛冶である刈谷直治氏(当時90歳)の神社奉納用日本刀制作風景とインタビュー、合祀取り下げを求める日本人と台湾人遺族の神社との交渉風景とインタビューと過去の歴史映像だけで構成された映画であるに過ぎない。カメラの前に展開された事実の提示、それが映画『靖国』の基本なのである。

 ここに、「反日的」という評価の対象となりうるナレーションを加えれば、確かに「反日映画」になるのだろうが、そのような付加物はない。

 

 それは、撮影を担当していた堀田康寛氏のカメラワーク(もちろん背後には監督の存在もあるわけだが)が、常に全体状況とその場面の中心人物の動きの双方を押えるという姿勢に徹していたことにもよるように思う。

 たとえば、思い入れたっぷりな(「意味深な」とでも言うべきか)アップの多用は排除されているのだ。過剰な心情表現の排除が、映画全体を通して行き届いているのである。

 

 2005年の「靖国神社」に関する記録映像であることに、意図的に踏みとどまろうとしているように見える。

 

 しかしそれは「中立的な映像」であることを意味するわけではない。左右の主張をそれぞれ等価なものとして取り上げ、自身は真ん中の安楽椅子に倒れる、というような安易な姿勢は存在しない。

 アジテーションの前にまず事実を、その禁欲的姿勢が、中立的に見える映画作品として結実したと考えるべきだろう。

 

 

 

 靖国神社について考えるのは、映画を観た一人一人であるべきなのであって、どのように考えるべきかを提供することは目的とされていない。そのように、制作の姿勢を評することが出来るだろうか?

 凝った味付けの料理を提供することではなくて、良質な素材を提供すること。それが目指されていたように見えるし、そのことに成功した作品であるように、私には思えたのだ。

 

 映画を観ることもしなかった人々が映画の上映に反対した事実は、実に滑稽であるが深刻でもある。

 反対する対象が何であるのか、その内容を知らずに反対することほど愚かな行為はないだろう(と私は思う)。

 

 

 

 たとえば映像中で、家族の靖国合祀に反対する台湾人が激昂する姿は、その心情と論理を理解すれば当然のものであろうが、そうでない者には唐突で場違いな印象をもたらしもするだろう。

 「靖国派」の追悼式会場に出向いて妨害を企てた「反靖国派」の青年が会場から排除され負傷する姿も、ヒロイックであると同時に独りよがりな行為にも見えてしまう。反対党派の集会で妨害行為をすれば、当然の帰結でもあるのだから。

 つまり、映像自体は、神社の対応に激昂する台湾人の姿を伝え、反靖国派の青年の行動の顛末を記録しているだけであって、それ以上の説明を加えないことにより、彼らのためのプロパガンダ映画に陥ることは避けられているのである。

 しかし、すべては記録されてもいるわけだ。

 

 そこに何を見出すのかは、観客の側の問題なのである。

 

 

 

 対立が存在する問題を対象にした時に、善悪の対立として図式化するのではなく、その対立そのものを描き出すこと。

 そこが目指され、達成されていた作品。

 そのように言うことが出来るだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

(オリジナルは、投稿日時 2009/05/03 22:23 → http://www.freeml.com/ep.umzx/grid/Blog/node/BlogEntryFront/user_id/316274/blog_id/103024

 

 

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投稿: 田中 | 2009年5月 4日 (月) 19時03分

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