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2009年5月 1日 (金)

神の国の軍隊

 

大日本国は神国なり。天祖はじめて基をひらき、日神ながく統を伝へ給ふ。我国のみこの事あり。異朝にはそのたぐひなし。このゆえに神国と云ふなり。

 

     北畠親房 『神皇正統記』

 
 

…ということなんだな。

 
 

 神の国の住人なのである、この私たちは。

 あまり実感はないかも知れないが、20世紀の前半の日本では常識だったのである。人間が空を飛ぶ道具で戦争をする時代に、しかし、日本は神国でもあったのだ。

 

 
 
 

 あの大東亜戦争は、大日本帝國臣民に向けられた、

天佑ヲ保有シ萬世一系ノ皇祚ヲ踐メル大日本帝國天皇ハ昭ニ忠誠勇武ナル汝有眾ニ示ス

という言葉で始まり、

皇祖皇宗ノ神靈上ニ在リ朕ハ汝有眾ノ忠誠勇武ニ信倚シ祖宗ノ遺業ヲ恢弘シ速ニ禍根ヲ芟除シテ東亞永遠ノ平和ヲ確立シ以テ帝國ノ光榮ヲ保全セムコトヲ期ス

という言葉で終わる昭和天皇の言葉で開始されたのであった。 

 

 まさに、

 大日本国は神国なり。天祖はじめて基をひらき、日神ながく統を伝へ給ふ。我国のみこの事あり。異朝にはそのたぐひなし。このゆえに神国と云ふなり。

という認識が、国民にとっての現実だったわけだ。

 

 

 

 遂に来た一億待望の一瞬 撃滅へ、無二の関頭

 見よ敵補給限界点割る

 神機到る! 未曾有の戦果の下敵撃滅の神機到る! 陸、海、空の全空間を埋め尽くして死闘相次ぐ沖縄の決戦場、わが特攻隊の猛攻により敵艦船の数は特に著しく減少するが、必死の補給に狂奔する敵はたちまちこれを補充し、否前を凌駕する艦船数を以てすることさ再三であった、然しながら決戦的様相の最高潮に達するやさすがに物量を誇るアメリカの補給もわが必死必中の特攻隊を以てする連日連夜の猛攻の前には漸く頂点をつきここ一両日来全般的には著しくその数を減じ、補給の速度も漸次緩慢化するに至った

     『読売新聞』 昭和20年4月19日

 

 これが当時の新聞紙面である。

 

 「わが特攻隊の猛攻により」とは、つまり、称賛される戦果の陰には、機体の喪失と共にパイロットの死があったことを意味する。

 「神機」とは、すなわち操縦者の積極的な死への期待に支えられたものだった。

 陸海軍の特別攻撃隊にはそれぞれ名称があったのだが、現代社会で自爆攻撃の代名詞となった「カミカゼ」もまた、その特別攻撃隊の一つであった。「カミカゼ」すなわち「神風」である(「しんぷう」と訓むのが本来だったが、当時のニュース映画で既に「かみかぜ」として紹介されていたらしい)。

 ここでは、敵に対する神の風(鎌倉時代の故事のように)となることが、自殺攻撃を志願したパイロットに期待されていた、ということになるのだろう。

 

 

 決 戦 訓

 仇敵撃滅の神機に臨み、特に皇軍将兵に訓ふる所左の如し
一、皇軍将兵は神勅を奉戴し、愈々聖諭の遵守に邁進すべし。
 聖諭の遵守は皇国軍人の生命なり。
 神州不滅の信念に徹し、日夜、聖諭を奉誦して之が服行に精魂を尽くすべし。必勝の根基茲に存す。
二、皇軍将兵は皇土を死守すべし。
 皇土は、天皇在しまし、神霊鎮まり給ふの地なり。誓って外夷の侵襲を撃攘し、斃るるも尚魂魄を留めて之を守護すべし。
三、皇軍将兵は待つ有るを恃むべし。
 備有る者は必ず勝つ。
 必死の訓練を積み、不抜の城塁を築き、闘魂勃々以て滅敵必勝の備を完うすべし。
四、皇軍将兵は体当り精神に徹すべし。
 悠久の大義に生くるは皇国武人の伝統なり。
 挙軍体当り精神に徹し、必死敢闘、皇土を侵犯する者悉く之を殺戮し、一人の生還無からしむべし。
五、皇軍将兵は一億戦友の先駆たるべし。
 一億同胞は総て是皇国護持の戦友なり。
 至厳なる軍紀の下、戦友の情誼に生き、皇軍の真姿を顕現して率先護国の大任を完うすべし。
右の五訓、皇軍将兵は須く是を守し、速かに仇敵を撃滅して宸襟を安んじ奉るべし。

     『読売新聞』 昭和20年4月21日

 

 阿南陸軍大臣の発表した「決戦訓」がこれである。

 

 

 神の国の将兵の体当り精神への期待、つまり兵士への自殺攻撃敢行への期待が込められた大日本帝國陸軍最高首脳の言葉、ということになる。

 近代総力戦の時代、20世紀の大日本帝國の実話である。

 

 

 

 

 しかし、「神国」の神は、本当にそんなことを望んでいたのだろうか?

 

 

 

 

 

(オリジナルは、投稿日時 2009/04/30 22:38 → http://www.freeml.com/ep.umzx/grid/Blog/node/BlogEntryFront/user_id/316274/blog_id/102780

 

 

   

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投稿: sirube | 2009年5月 2日 (土) 01時35分

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