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2009年4月11日 (土)

「卒業制作優秀作品展」を観る

 

 4月6日から、「平成20年度 武蔵野美術大学 造形学部卒業制作 大学院修了制作 優秀作品展」が開催されている。

 
 

 先日、娘と共に楽しんで来た。

 
 

 「卒業制作展」リポート(?)にも書いたことだけど、そもそも、美術大学の「卒業制作」自体が面白い。絵画・彫刻だけが「美術大学教育」の対象ではないのである。

→ http://www.freeml.com/ep.umzx/grid/Blog/node/BlogEntryFront/user_id/316274/blog_id/92750

→ http://www.freeml.com/ep.umzx/grid/Blog/node/BlogEntryFront/user_id/316274/blog_id/92855

→ http://www.freeml.com/ep.umzx/grid/Blog/node/BlogEntryFront/user_id/316274/blog_id/92935

→ http://www.freeml.com/ep.umzx/grid/Blog/node/BlogEntryFront/user_id/316274/blog_id/93031

 

 その中の「優秀作品」展だ。つまらないわけはない。

 

 「卒業制作展」の時点で強く印象に残った作品が、やはり「優秀作品」として選ばれている姿に出会うのは、(なぜか、どこか)うれしい感じだ。「衆目の一致するところ」というものはある、ということだろう。

 しかし、未見の作品も多いのだ。それだけ大量の作品が、卒業制作として作られるわけだ。ちなみに清掃担当者から聞いた話では、「芸祭」の時期と「卒業制作展」前後が、ゴミの量ではトップを争う状態だそうだ。創作とゴミ。「寓話」が潜んでいそうである。

 
 
 

 展示会場も、美術資料図書館展示室、12号館地下展示室、9号館地下展示室の3ヶ所がメイン会場となっている。スタンプラリー形式のパンフレットになっていて、スタンプを3つ集めると、特製のエコバッグがもらえる仕組みだ。見落としを防ぐための工夫? もちろん、父娘共にエコバッグをゲットしたことは言うまでもない。

 
 
 

 父娘共にお気に入りだったのが、視覚伝達デザイン学科の保田卓也さんの作品だった。

 「プロパガンダの解剖」というタイトルのパネルと本。「レッツ・プロパガンダ」というタイトルのアニメーション。

 アニメのナレーションが、娘の好きなムサビ演劇関係の佐野淳子さんという関係で(?)娘はアニメ、父はよく造り込まれた冊子に夢中。

 戦時日本、ナチス・ドイツ、ファシスト・イタリア、社会主義のソ連、戦時アメリカ、戦時イギリスと、それぞれのプロパガンダポスターの事例を集めた冊子(それぞれに1冊が宛てられている)には、「現代史のトラウマ」関係者(?)としては惹きつけられざるを得ない。血沸き肉踊るステロタイプな世界だ。

 冊子が美しくプリント・レイアウトされた事例集であるのに対し、アニメの方はプロパガンダ作成マニュアル的な構成だったらしい(娘の話による)。なかなかに皮肉の効いたアニメだったようで、娘にオオウケであった(アニメの方は、後日、機会を作って自分の目でも観たいと思っている)。

 

 「現代史のトラウマ」系作品(?)としては、やはり視覚伝達デザインコースの大学院修了制作、パク・ジフンさんの「近代東南アジアにおける文字政策の研究」が興味深かった。

 タイトルは「東南アジア」となっているが、対象となっているのは、日本、朝鮮半島、中国大陸、台湾なので、実際は「東アジアにおける…」であろうけれど。

 それぞれの近代国家としての成立過程と、文字政策(正書法と字体の確定)が考察の中心となっているのだが、朝鮮半島、満洲、台湾の事例は、日本による統治という共通の時期を抱えている。それぞれの教科書が事例として展示されているのだが、日本統治下では、教育されるのは日本語なのである。それぞれの地域の固有言語への配慮はない。そんなことが一目瞭然なのである。これも、もう一度、ゆっくり読み込んでおきたい作品だと思った。

 

 これも、視覚伝達デザイン学科の卒業制作作品だが、川瀬康子さんの「しいたスタイル ~自閉っ子のための玩具~」も見落としたくない。

 彼女が教育実習先で出会った自閉症の小学生達。その中の一人である「しいた」君。その、しいた君の特性(自閉症児としてのキャラクター、つまり、こだわり等の特徴)を把握した上で、彼の興味関心に沿った玩具を開発する。その際、彼の興味関心のあり方の特徴を絞り込むことにより、逆に人間の認知を支える基本特性が見えて来る。結果として彼の興味関心に的を絞ったはずの玩具は、汎用性を持った玩具として完成することとなった。カラフルな木とアクリルのゲーム形式の玩具である。

 

 父娘推薦作品としてもう一つ、田村陽菜さんの作品「グルーミング・アート 1」及び「グルーミング・アート 2」は落とせない。油絵学科の卒業制作ではあるけれど「本」が二冊。

 それも文章で勝負!な、本なのだ。

 美術作家を目指すぞ!という気負いを欠いて、しかし楽しげに制作を続ける一群の学生の存在。そこにある謎(?)に挑んだ作品(?)、という感じだろうか。毛づくろい(グルーミング)をするネコを眺める心地よさと、気負いのない作者達を前にしての感覚の親近性がタイトルの由来らしい。

 実は、田村陽菜さんは、例の「うそ新聞」の作者である。この卒制「グルーミング・アート」も、昨年の芸祭の時点で予告されていたものだ(「うそ」ではなかった→ http://www.freeml.com/ep.umzx/grid/Photo/node/PhotoEntryFront/user_id/316274/file_id/52295 2007年の「うそニュース画像 → http://www.freeml.com/ep.umzx/grid/Photo/node/PhotoEntryFront/user_id/316274/file_id/35589)。

 「1」に基本的コンセプト、「2」は、そのテーマを深めるためのインタビュー集という構成である。「うそ新聞」の作者であるから、辛辣さをユーモアで包みながらの展開となっており、大いにウケながら読み終えてしまった。

 この「グルーミング・アート」、岡田斗司夫氏が近年提唱(?)している、「プチクリ」というコンセプトが近い感じである。

 
 
 

…と、まぁ、紹介したのは絵画でも彫刻でもない作品だけど、もちろん、絵画彫刻も観ておくに値する作品が揃っている。

 

 それに、作品によっては、卒業制作展時からヴァージョン・アップされていたりするのだ。

 

 不便な場所だけど、出かけるに値すると思う。

 
 

   (武蔵野美術大学にて、4月22日まで開催。ただし日曜日は休館)

 
 
 

 

 

 

 

(オリジナルは、投稿日時:2009/04/09 20:45 → http://www.freeml.com/ep.umzx/grid/Blog/node/BlogEntryFront/user_id/316274/blog_id/100689

 

 

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