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2009年1月 6日 (火)

幻のドイツ民主共和国建国60周年

 

 2009年だ。

 今から、もう20年前のことになる。

 1989年の11月、ベルリンの壁が「崩壊」した。

 1989年の今頃、誰がそれを予測していただろうか?

 ドイツ民主共和国(旧・東ドイツ)は、1989年10月、建国40周年を迎えることになっていた。実際、10月には建国40周年の式典が、当時の東欧圏の社会主義諸国の首脳の列席の下、華々しく開催されたものだ。

 ドイツ民主共和国国家評議会議長にしてドイツ社会主義統一党書記長であったエーリッヒ・ホーネッカーは、10月9日の式典会場で、「壁は今後とも数十年、いや百年は存続するであろう」という趣旨の宣言をしている。その予言が覆されるのは1ヵ月後のことである。

 そして、式典会場に並んだ各国首脳陣の多くは、1年後には権力の座にはいない。誰がそれを予測していただろうか?

 そもそも、党中央委員会の国防担当委員として、1961年に「壁」の建設の指揮を執ったのがホーネッカーであったという。そのホーネッカーの目前で壁は崩壊する。

 正確には、壁崩壊の時点では、既にホーネッカーは前国家評議会議長にして前党書記長であった。10月18日、党第9回中央委員会総会で、ホーネッカーは国家と党の役職から解任されていたのである。党と国家の首脳は、ホーネッカーの解任により、事態は切り抜けられるものと考えていたわけだ。

 ところで「壁」とは何だったのだろうか?

 一般的には、城壁は、外敵の侵入への備えとして築かれるものだ。外部からの侵入者の阻止が目的である。

 ホーネッカーによりベルリンに築かれた壁の果たした機能は、しかし、外部からの侵入者の阻止、外部の脅威からの国民の保護ではなかった。

 壁により、東ベルリン市民は、そしてドイツ民主共和国国民は、壁の西側への移動の自由を奪われたのである。つまり、壁の内部に閉じ込められたのであった。

 既に生じていた西側との経済格差は、東独市民の東から西への移住として結実する。より高い生活水準獲得への期待の結果である。ドイツ民主共和国からすれば、それは国民の流出を意味する。それは人口の減少を意味し、国力の減少をも意味することになるだろう。

 国内の生活水準向上には時間がかかるだろうが、壁の建設なら手っ取り早い。東独国民は、壁により外部から遮断されることになる。

 20数年後になっても、西側レベルの生活水準の獲得は達成されなかった。隣国ハンガリーの国境解放により、ハンガリー経由での東独国民の西独移住が開始されるのが、1989年の夏のことになる。その時点で、既に壁には穴が開いていたわけだ。

 言うまでもなく、ドイツ民主共和国(東独)は社会主義体制の下にあった国家である。体制の頂点で、指導的立場にいるのは党組織である。その下に国家システムが位置することになる。

 政治・経済・外交・軍事・文化…、社会のあらゆる機能が党の統制指導の下に置かれるのが社会主義システムの原理である。党は労働者階級の利益を代表することになっている以上、社会主義システムの下では、労働者の利益は最大限に尊重されることになる(少なくとも理論的には)。

 現実の東独社会は、党官僚の利益を最大限に尊重する社会として成熟していった。労働者の利益は、確かに尊重されてはいたが、あくまでも書類上のことに過ぎなくなっていくのである。書類上の達成と現実の乖離ははなはだしいものであったが、秘密警察の存在が、乖離という現実が国民の話題となることを防止する。

 言論表現の自由に対する抑圧は、体制の延命には効果的ではあるが、社会的停滞の原因ともなっていくのである。1989年には、体制の延命も、限界に達していたのであろう。1990年10月には、国家としてのドイツ民主共和国は消滅するのである。

 壁の中に閉じ込められ、秘密警察により支配された生活は終わったわけだ。

 そして20年。

 新自由主義の20年間であった。

 20年後に拡がる世界は、失業の自由、飢え死の自由を保障している。

 そんな現在を誰が願ったのだろうか?

 

 

 

(オリジナルは、投稿日時:2009/01/06 22:02 → http://www.freeml.com/ep.umzx/grid/Blog/node/BlogEntryFront/user_id/316274/blog_id/90965

 

 

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