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2008年12月 7日 (日)

実は蒋介石を賞賛している(!?)賞金300万円獲得「論文」の不思議

 

 今日も、300万円の稼ぎ方のお勉強をしておきたい。

 田母神氏は、例の「論文」(http://www.apa.co.jp/book_report/images/2008jyusyou_saiyuusyu.pdf)中で、

 アメリカ合衆国軍隊は日米安全保障条約により日本国内に駐留している。これをアメリカによる日本侵略とは言わない。二国間で合意された条約に基づいているからである。我が国は戦前中国大陸や朝鮮半島を侵略したと言われるが、実は日本軍のこれらの国に対する駐留も条約に基づいたものであることは意外に知られていない。日本は19世紀の後半以降、朝鮮半島や中国大陸に軍を進めることになるが相手国の了承を得ないで一方的に軍を進めたことはない。現在の中国政府から「日本の侵略」を執拗に追求されるが、我が国は日清戦争、日露戦争などによって国際法上合法的に中国大陸に権益を得て、これを守るために条約等に基づいて軍を配置したのである。これに対し、圧力をかけて条約を無理矢理締結させたのだから条約そのものが無効だという人もいるが、昔も今も多少の圧力を伴わない条約など存在したことがない。
 この日本軍に対し蒋介石国民党は頻繁にテロ行為を繰り返す。邦人に対する大規模な暴行、惨殺事件も繰り返し発生する。これは現在日本に存在する米軍の横田基地や横須賀基地などに自衛隊が攻撃を仕掛け、米国軍人及びその家族などを暴行、惨殺するようものであり、とても許容できるものではない。これに対し日本政府は辛抱強く和平を追求するが、その都度蒋介石に裏切られるのである。実は蒋介石はコミンテルンに動かされていた。1936年の第2次国共合作によりコミンテルンの手先である毛沢東共産党のゲリラが国民党内に多数入り込んでいた。コミンテルンの目的は日本軍と国民党を戦わせ、両者を疲弊させ、最終的に毛沢東共産党に中国大陸を支配させることであった。

 我が国は国民党の度重なる挑発に遂に我慢しきれなくなって1937年8 月15 日、日本の近衛文麿内閣は「支那軍の暴戻を膺懲し以って南京政府の反省を促す為、今や断乎たる措置をとる」と言う声明を発表した。我が国は蒋介石により日中戦争に引きずり込まれた被害者なのである。

という「論理」で、蒋介石を非難している。

 しかし、そもそも、大日本帝國と清国、そして中華民国政府との間で締結された条約と、日米安全保障条約の性格は異なるものだ。

 日米安全保障条約により日本国内に駐留する米軍は、日本国の安全保障に不可欠の存在として、少なくとも歴代日本国政府からは考えられて来た。

 それに対し、かつて、中国大陸に駐留していた大日本帝国の軍隊が守ろうとしていたのは、大陸における大日本帝國の権益である。そこに存在していたのは、中国国民及び中国国民政府の利益を脅かす存在なのである。

 そこにあるのは、まったく異なる性格の条約であり、まったく異なる性格の駐留軍なのである。

 田母神氏は、その相違を無視するところで、身勝手な論理を展開しているに過ぎない、という点をまず指摘しておこう。

 その上で、田母神氏による蒋介石非難の「論理」を検討してみたい。

 田母神氏は、要するに、

1) 多少の圧力を伴わない条約など存在したことがない

2) 我が国は国際法上合法的に中国大陸に権益を得て、これを守るために条約等に基づいて軍を配置した

3) この日本軍に対し蒋介石国民党は頻繁にテロ行為を繰り返した

4) 我が国は蒋介石により日中戦争に引きずり込まれた被害者なのである

という「論理」で、大日本帝國を「被害者」として位置付け、蒋介石を非難しているわけだ。

 しかしその一方で、田母神氏は、かつての大日本帝國の行動の正当化の為に、

現在の中国政府から「日本の侵略」を執拗に追求されるが、我が国は日清戦争、日露戦争などによって国際法上合法的に中国大陸に権益を得て、これを守るために条約等に基づいて軍を配置したのである。これに対し、圧力をかけて条約を無理矢理締結させたのだから条約そのものが無効だという人もいるが、昔も今も多少の圧力を伴わない条約など存在したことがない。

しかし人類の歴史の中で支配、被支配の関係は戦争によってのみ解決されてきた。強者が自ら譲歩することなどあり得ない。戦わない者は支配されることに甘んじなければならない。

と書いてもいるのである。

 そこにある「論理」は、

1) 人類の歴史の中で支配、被支配の関係は戦争によってのみ解決されてきた

2) 強者が自ら譲歩することなどあり得ない

3) 戦わない者は支配されることに甘んじなければならない

ということになるだろう。

 この「論理」を肯定することにより、蒋介石の行為は、実に正当な行為としてしか評価出来なくなってしまうことになる。

 田母神氏は、その「論文」の結語部分で、

 

 私たちは日本人として我が国の歴史について誇りを持たなければならない。人は特別な思想を注入されない限りは自分の生まれた故郷や自分の生まれた国を自然に愛するものである。日本の場合は歴史的事実を丹念に見ていくだけでこの国が実施してきたことが素晴らしいことであることがわかる。嘘やねつ造は全く必要がない。個別事象に目を向ければ悪行と言われるものもあるだろう。それは現在の先進国の中でも暴行や殺人が起こるのと同じことである。私たちは輝かしい日本の歴史を取り戻さなければならない。歴史を抹殺された国家は衰退の一途を辿るのみである。

 

と書いているのだが、蒋介石は、まさに「自分の生まれた故郷や自分の生まれた国を自然に愛する」が故に、「強者が自ら譲歩することなどあり得ない。戦わない者は支配されることに甘んじなければならない」と田母神氏により表現された当時の国際情勢の中で、大日本帝國による支配と戦った隣国の愛国者として、高く評価されざるを得なくなってしまうのである。

 少なくとも、田母神氏の論理展開には、そのような反論に対し、再反論をするための論理が用意されていない。

 つまるところ、この「論文」で田母神氏は、蒋介石を批判しているつもりで蒋介石の行為の正当化の根拠を提供しているのである。

 賞金300万円の提供者は、気付いているのだろうか?

 実は自分たちは、(それに気付くことなく)、蒋介石の愛国者ぶりを称揚してしまうような「論理」の隠された「論文」に、300万円を授けていたのだということに。

 論文を書いた当人、選考に当たった審査委員、そして賞金を提供した社長だか会長だかは気付いているのだろうか?

…って、そりゃぁ、気付いていたら、こんなことになってはいないだろうなぁ。

 

 

 

(オリジナルは、投稿日時:2008/11/10 22:11 → http://www.freeml.com/ep.umzx/grid/Blog/node/BlogEntryFront/blog_id/84908/user_id/316274

 

 

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