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2008年12月 7日 (日)

不都合な戦争の都合という問題 2

 

 昨日はいきなり、

戦争とは、集団的に人が人を殺すことであり、

戦争とは、集団的に人が人に殺されることである。

という言葉を提示することから始めた。

 戦争における殺人は、個人的な行為ではなく、社会により軍人・兵士と認定された人間による殺人であり、国家の要請に根拠を持つ合法的な行為である。

 軍人・兵士の地位は、世襲身分であることもあれば、当人の志願に依存する場合もあるし、国民としての義務として課されるものであることもある。時代により地域により、その様態は異なるだろう。

 いずれにせよ、国家の組織の一つである軍隊に対し、国家は軍事力の行使を要請することが出来る。敵対する国家の軍隊と闘い、勝利を獲得することが、軍隊の課題となる。そこでは、敵対する国家の軍人・兵士に対する殺害が、当然のこととして必要とされる。

 一般的に国家は、私的な殺人を禁止する。私的な殺人は、刑法上の犯罪とされ、処罰の対象とされるし、「死刑制度」が存在すれば、「死刑」の対象とされる可能性も大きい。

 それに対し、戦場の兵士による、正当な戦闘行為の遂行上生じてしまう殺人を、犯罪として国家が処罰することはない。

 死刑の執行と、戦争における敵軍兵員の殺害は、どちらも殺人という行為そのものではあるが、国家という観点からは犯罪ではないのである。

 ただし、ここで見落としてはならないのは、軍隊とは厳格な命令系統に基づく組織だということだ。交戦による殺害も、命令に基づくものでなければならない。

 指揮命令系統からの逸脱行為は、軍事裁判の対象となり、処罰される。

 もちろん、国際的に共有された交戦規則に反する行為、戦争犯罪として規定されている行為も、当然、処罰の対象となる(歴史的に新しい現象と言えるだろうし、見て見ぬ振りをされることが多いのも事実であるが)。

 あくまでも、そこにあるのは公的な行為なのであり、私的な逸脱は(本来的には)認められないのであるという発想が存在するのだ。

 さて、身分制が支えていた軍隊、傭兵による軍隊、志願兵によりのみ成り立つ軍隊とは、プロフェッショナルによる組織であることを意味する。

 職業としての軍人による軍隊だ。かつては身分=職業であったわけだし、傭兵はまさに金のために軍人となった人々だ。

 昨日は、考察の焦点を、「近代における戦争」に置いていたはずだ。

 近代における戦争とは、国民国家による戦争であり、そこでは国民=兵士とされていたのであった。

 軍隊における兵員の補充を支えるのは徴兵制度であり、成人男子には兵役が義務として課せられる。徴兵制度下における兵役は職業ではないのだ。

 近代以前における戦争においては、戦闘行為のプロが、敵軍兵員の殺害までをも含む軍事行動を遂行していたわけだ。

 付け加えておけば、近代以前における戦争を支えていたのは、近代的兵器ではない。存在したのは、(比較すれば)殺傷能力の低い兵器群である。

 現在に比べれば、比較の対象とすることすら適わぬような、殺傷能力であったことを思い起こす必要がある。

 そして、職業としての軍人にとって、互いに重要なことは、自分が生き残り・戦闘にも勝利を得ること、であった。そこでは、本来的に、殲滅戦は目指されないのである。

 戦争が殺し合いを含む闘争行為であることは、いつの時代でも免れ得ない。

 しかし、戦争が殲滅戦の様相を見せるのは、近代の特徴でもある。いや、皆殺し行為自体は、古くから存在した。

 近代における殲滅戦は、国民国家による殲滅戦なのである。かつてのような、プロの戦士の手作業による「皆殺し」ではなく、兵役の義務を果たす国民による殲滅戦であり、近代的兵器による工業的な「皆殺し」なのである。

 国民国家とは、国民を主体として考えられた国家である。

 国民に対し、兵役の義務を果たし、他国の軍人兵士の殺害を求める国家の主体は、その国民自身なのだ。

 戦争は国民の都合によって開始される。

 不都合なことかも知れないが、近代における戦争、国民国家による戦争を支えている理念はそのようなものであった、はずだ。

 

 

 

(オリジナルは、投稿日時:2008/08/23 19:23 → http://www.freeml.com/ep.umzx/grid/Blog/node/BlogEntryFront/blog_id/76676/user_id/316274

 

 

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