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2008年11月26日 (水)

憲法9条の賜としての安倍政権という現実

 

 憲法改正について考えてしまったので、書いておくことにする。

 本来なら、連休も終わり、神様の出番なのだが、もう一日お休みを続けてもらおう。


 たまたま、NHKの「クローズアップ現代」で、憲法9条をめぐる話題を取り上げていた。それを見ているうちに思いついたことを書いておきたい。



 結論から言えば、安倍政権は、憲法9条の賜(たまもの)だろうということだ。
 憲法9条がなければ、現在、自民党に政権があったかどうかも疑わしい、そんな問題を取り上げてみる。

 憲法改正をして、9条条文を改変することの目的とされているのは、自衛隊を軍隊として公式に認定することと、国際貢献の名の下に戦闘行為も含めた海外派遣を可能にすることである。

 イラク戦争当時、自民党小泉政権は、自衛隊の海外派遣まではなんとか実現させたものの、その任務は非戦闘地域内の復興支援業務に限定せざるをえなかった。9条の縛りがあったからだ。
 9条改定により、戦闘地域内での戦闘行為にも参加出来るようにすることが可能になるわけだ。
 つまり、戦後復興における、非戦闘地域内限定の復興支援業務だけではなく、開戦当初からの戦闘への参加、つまりイラク戦争への参戦も可能になるということだ。

 9条「改正」の結果もたらされるのは、あのイラク戦争を例にとれば、ブッシュ米国政権主導の「有志連合」の一翼を担い、参戦国としてイラク戦争そのものに関与することが可能になる状態である。

 しかし、幸いなことに、9条の縛りのおかげで、その道は閉ざされていたのである。誰に一番幸いしていたのか。
 安倍晋三氏にである、と私は思う。

 イラク戦争開戦から、参戦国としてイラク国内の戦闘に加わり、占領に関与していたら、日本はどうなっていただろうか。
 終わらぬ戦闘状態と、それに伴う戦死者の増加の中で、イタリアやスペイン同様に政権交代を迎えるか、ブレアやブッシュのように低支持率の中でなんとか政権の延命だけをはかることが出来ているか、いずれにせよ、自らの政権で憲法改正を企てることなど不可能な状態となっていたはずだ。

 9条の縛りを抜きに、自民党政権の下、イラク戦争に直面していたとすれば、有志連合に参加し、交戦国の一員となる以外に選択肢があったようには思えない。
 そして、そのことが国益につながったとは思えない。
 現在、有志連合主要参加国中に、イラク戦争参加が、国家的利益として評価されている国があるだろうか。ありはしない。
 米国内では、いわゆるネオコン連中の利益がかつては語られたが、今では彼らはマヌケの代名詞である。
 イタリア・スペインでは、当時の与党は政権を失い、国家的利益どころか自党の利益さえ損なっている。

 小泉政権の下の総選挙で自民党が勝利を得られたのは、9条の縛りのおかげで、自衛軍ならぬ自衛隊の任務が、非戦闘地域内での復興支援業務に限定されていたればこそのことなのである。
 現在の安倍政権誕生も、その結果を受けてのことであった。


 私自身は、国民主権という原則から考えれば、シビリアンコントロールの下、自衛軍を持つこと自体には、論理的には反対ではない。
 マジョリティーとしての国民を信頼するのであれば、主権者としての国民の下でシビリアンコントロールを機能させることは可能であるはずであり、「自衛」軍として軍事力を持つことから問題が生まれるとは考え難い。

 しかし、イラク戦争をめぐる9条抜きの日本国家の決断をシミュレーションしてみた結果は、上記の通りなのである。
 イラク戦争開戦にあたり、米国を支持した自民党政府の決断がいかに誤りに満ちたものであったのか、それがよぉく理解出来るはずである。そのような政治家によるシビリアンコントロールの危うさを考えざるを得ないだろう。

 9条を保持することが自民党の政権維持にさえ有利に働いていたという現実を、もう少し、直視してみても良いのではないか、そう私は思ったわけだ。

 

 

 

(オリジナルは、投稿日時:2007/05/07 21:40 → http://www.freeml.com/ep.umzx/grid/Blog/node/BlogEntryFront/blog_id/30496/user_id/316274

 

 

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