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2008年11月25日 (火)

亡国の礎 2 盧溝橋事件 (現代史のトラウマ 18)

 

 今日も、「亡国」の話である。

 1937年、支那事変。
 当初、軍人達は、ちょっと武力行使で脅かせば、中華民国政府は降伏する、そう主張していました。大日本帝国に有利な条件で講和に応じると。

 現実的には、外国の半植民地状態という現状の自覚が、中国の人々に共有され始め、近代的主権国家としての国家建設が目標となりつつあった時代でした。
 排他的な主権領域と中国人が考えていた土地に、満洲国を「建国」し、その上に盧溝橋事件をきっかけに武力行使の拡大を続ける大日本帝国は、当然のこととして第一の排撃の対象となっていました。

 国際連盟にも承認された中華民国政府が統治する主権領域内に軍隊を送り込み、敵対的な軍事行動を続けている以上、排撃の対象となるのは当たり前のことです。
 日本国政府が統治する主権領域内に、他国の軍隊が侵入し、敵対的な軍事力行使を試みるような事態に備え、その排除を目的として、自衛隊→自衛軍は存在しているわけです。1937年に大日本帝国の軍隊が、中国本土で、正統的なものと国際的に認められてた政権に対し、軍事力の行使の拡大をもって、自らの政治的・経済的利益の獲得を要求した以上、排除の対象となったのは当然のことでした。

 「愛国心」というものを日本国民以外の外国国民も所有していると考えるのは当然のことでしょう。歴史的過程の中で、ナショナリズムが浸透しつつあった中国の地で、大日本帝国の行為に対する憤激が一般化していくことの蓋然性を理解出来ないとはどのような事態なのでしょうか。
 中国人には「愛国心」は生じえないという判断は、どのように可能なのでしょうか。

 1937年、明治維新から70年過ぎただけの時点です。維新から、当初の内戦状態(西南戦争を頂点とする)を経て、明治政府が権力の正統性を確立するのに10年を要しています。
 日本が統一国家としての姿を明確にしてから60年ほどしか経ていない時点だ、ということなのです。
 「国民」が、日本を「祖国」と考え、「愛国心」の対象としていくには、更なる年月が必要でした。
 1937年、辛亥革命から26年、中華民国成立から25年が過ぎただけの時点です。広大に中国大陸にようやく統一的な権力が確立されつつある時でした。小さな日本列島で10年、広い大陸で26年、要して当然の時間です。

 大日本帝国の軍事力行使を、大陸に統一的権力が確立していないことを理由に正当化するような試みには、賛成出来ません。
 大陸における、民族自決は当然のことであり、広さゆえに時間のかかるのも当然のことです。混乱状況に乗じて、軍事力行使を進め、自らの政治的・経済的利益の獲得を試みることに道義性は見出されません。

 中国人の抵抗を、当時の日本の新聞雑誌は、「暴戻支那」、「暴支膺懲」などという形容で報じました。そこでは、「愛国心」に基づく支那人の抵抗が、不当な暴力行使として描かれてしまっています。

 これは、現在のイスラエル占領下のパレスチナの人々による、イスラエル国家に対する抵抗を、「テロ」として告発するイスラエルの姿勢に、現在でも共通するものです。

 他国国民のナショナリズムに対する無理解がそこにあります。
 その無理解の上に、戦闘を継続し、講和への可能性を自ら閉ざし、終わりなき戦闘状態を作り出してしまいました。戦線の拡大と共に、占領地の治安の維持は不可能となり、大日本帝国にとり、戦争状態の終結はますます困難となるだけでした。

 現在、米国がイラクで陥っている状況を、70年前の大日本帝国は、既に、味わっていました。

 そして、1941年12月8日、対米英戦の開始に至ります。中国の正統政府との戦闘に勝利出来なかった国家とその軍隊が、ますます戦線を拡大するという判断はどのように可能だったのでしょうか。

 亡国への道、考えておくべきことは、まだまだあります。

 

 

 

(オリジナルは、投稿日時:2007/01/06 23:56 → http://www.freeml.com/ep.umzx/grid/Blog/node/BlogEntryFront/blog_id/17575/user_id/316274

 

 

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