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2008年11月25日 (火)

岡本太郎 『日本の伝統』 1

 岡本太郎の『日本の伝統』を初めて読んだのは、まだ私が高校生の頃、なんと30年以上も前の話だ。

 岡本太郎の作品については、実は、それほど評価していない。…というか、いなかった。
 岡本太郎自身の芸術論の絵解き、そんな感想が付きまとってしまうところがあったからだと思う。
 
「キレイなものじゃなくって、なんだこれは!!と思わせるものが芸術なんだ」
 
 …というような話を、あの表情を交えてしている姿を、度々、テレビ画面で観たりして、話自体には納得しながらも、どこか、作品がその芸術論の説明・絵解きで終わってしまっているように感じられてしまっていたのだった。
 
 夏休みに、娘の求めに応じて、再発見された「明日の神話」を、暑い中、日テレまで観に行った。これまでの印象の再確認と同時に、そこに込められた岡本太郎のエネルギーの大きさには、やはり、頭を下げずにはいられなかった。やっぱ、すげーや、そう思いました。
 
 で、本題の『日本の伝統』。
 最初は高校生向け(?)の松田道雄のアンソロジーに採録されていた第1章「伝統とは創造である」の文章に感銘を受け(つまりオオウケし)たのが始まりだった。
 家に帰り、その話をすると、母は書棚から『日本の伝統』を抜き出して見せるじゃありませんか(家にあったわけ)。で、全文読みました。ますます感銘を受け(オオウケし)、岡本太郎ファン誕生となったのでございました(それでも作品は好きではなかったのですが)。
 
 で、『日本の伝統』。このところの、「美しい国」だなんだかんだの話の中で、日本の「伝統」が持ち出されるのを見るに及び、あんたら、そいつぁ、ちょっと話がおかしかぁござんせんか、という気分は膨らむばかり。
 それで、今回、娘のために文庫化されたのを買ってきたところなので、ここで、ちょっとご紹介を、そう思ったわけでございます(光文社 知恵の森文庫)。

 

 
 伝統を徹底的に見かえす ― それが『日本の伝統』の目的です。
 似て非なるものほど、非なるものはありません。伝統主義者ほど伝統について見当ちがいしているものはないでしょう。古いものをカサにきて、現実を侮辱するなんて、これくらい非伝統的であり、人間として卑怯なことはありません。そういう気分にたいする憤りから、私はこの本を書いたのです。…

 

 

 昭和31年8月15日に書かれた「はじめに」の一節です。

 
 第1章では、亀井勝一郎や竹山道雄の文章を取り上げてコキ下ろしています。そこが実に痛快で、若き日の私は大いに感銘を受けました(オオウケだったわけ)。ホントは、そこから全文引用したいくらいですが、字数制限で諦めましょう(まずは書店でどうぞ)。
で、戦後日本の駅前風景の醜悪さを嘆くだけの竹山道雄をコキ下ろした続きで、

 

 

 それが現実であり、現代日本文化の姿であるならば、全面的におのれに引きうけなければならない。ツバをひっかけただけで通りすぎるとはもってのほかです。まず冷静に正視する。それは、のりこえる第一の前提です。残酷な、絶望的な現実であるならばこそ、あるがままを認め、そこから出発する決意を持つべきです。すなわち芸術の問題であり伝統にたいする正しい態度だと思います。

 ところが彼らは、その点をごまかしています。(自分たちが小指の先だけでも力をかしたわけではないのに、)まるでおのれの権利ででもあるかのように古典をふりかざし、過去のがわにたって居丈高く現在をいやしめ、今日ただいま、おのれが負わなければならない責任をのがれている。卑怯です。これが今日の伝統主義者なのです。

 

 
…と、言い切っています。そして、

 

 

 すべての古典はそれぞれの時代に、あらゆる抵抗にたいして現在を決意し、たくましい生命力を充実させた精神の成果です。過去の権威によりかからず、おのれを卑下せず、はげしく生ききった気配にあふれています。そういうものだけが伝統として、精神的に、肉体的に、われわれ現在を決意したものにびりびりつたわってくるのです。

 

 

「古典はその時代のモダンアートだった」という小見出しの文章の一節です。

                    ― 続く ―

 

 

 

(オリジナルは、投稿日時:2007/02/03 23:57 → http://www.freeml.com/ep.umzx/grid/Blog/node/BlogEntryFront/blog_id/20865/user_id/316274

 

 

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